文:ねじめ正一 絵:高畠那生 出版:光村教育図書
好きで好きでたまらない人。
その人に何とか気に入ってもらおうと頑張る。
でも、力が足りないこともある。
そんなことを独特な感じで伝えて来る絵本です。
あらすじ
としおくんはゆきちゃんのことが大好きなんだけど、
ゆきちゃんはとしおくんのことが好きじゃない。
としおくんはゆきちゃんのためならとしおくんむしになるって言うけど、
ゆきちゃんはならなくていいと言う。
としおくんは勝手に羽の生えたとしおくんむしになって、
ゆきちゃんのまわりをパタパタ飛んだり、空高く飛んでから急降下したり。
そうしているうちに、ゆきちゃんはとしおくんのことがかわいくなってきた。
嬉しくて、もっと高く飛んでかっこよく降りてこようとしたが、
とたんに疲れてきて、へばってきた。
「としおくん!ここでがんばるのよ!」とゆきちゃんが応援してくれる。
としおくんは頑張ってゆきちゃんに好きになってもらうことが出来るでしょうか。
『としおくんむし』の素敵なところ
- 独特過ぎる感性
- でも、気付いたらこの世界観に入り込んでしまう
- しかし、現実の残酷さを教えてくれる最後
としおくんがとしおくんむしに変身することになんの理由もありません。
なぜ虫なのかもわかりません。
でも、としおくんは頑張っています。
深く考えてはいけないのでしょう。
そして気付けば「なんで虫になるの?」と言っていた子どもたちも、
「好きになってくれるのかな」「としおくん頑張れ!」と普通に物語に入り込んでいます。
まるで、これが当たり前かのように。
そんな深く考えずに楽しめる魅力があります。
しかし、最後は残酷な現実が待っています。
ゆきちゃんの表情や態度、としおくんの背中を見てきっと色々思うところがあると思います。
これもまたこの絵本の魅力です。
ぜひ、実際にこの絵本の結末を見てみてください。
『としおくんむし』のおすすめの読み方
- 抑揚をつけすぎず淡々と読む
文章と話の流れ、どちらも抑揚のない感じで進んでいきます。
「笑わせようとしていませんよ」と言う感じで笑える場面が出てきます。
なので、こちらも当たり前のように一定のペースで抑揚をつけず、絵本の雰囲気に合わせていきましょう。
そうすることで、最後のページの味も際立ちます。
読んだ後、意外と複雑な気持ちになるこの絵本。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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