作:なつめよしかず 出版:福音館書店
いつも通りの昼下がりにそれは起こった。
母さんアヒルの後ろにいた赤ちゃんアヒルが消えたのだ。
一匹・・・そしてまた一匹・・・。
あらすじ
天気のいい日に、アヒルのお母さんが、4羽の赤ちゃんを連れて池にやってきました。
池の中で赤ちゃんたちは大はしゃぎ。
お母さんが泳ぎ出すと、赤ちゃんたちも一列になってその後ろに続きます。
しばらく行くと、一番後ろの赤ちゃんが遅れてきました。
その後ろには大きな黒い鯉の姿が・・・。
そして、遅れていた赤ちゃんが忽然と消えました。
その後も一羽、また一羽と消えていき、とうとうお母さんだけになってしまいました。
お母さんは全く気付いていません。
そのまま、お母さんは橋の下に出来た影の中へ消えていきました。
中は真っ暗で何も見えません。
しかし、影から出てきてしばらく行くと、お母さんの前に消えた赤ちゃんが一羽現れました。
さらに一羽、また一羽・・・。
一体どうなっているのでしょう。
『きえるあひる』の素敵なところ
- アヒルたちがとにかくかわいい
- 前半のホラー感と後半のほのぼの感のギャップ
- 消えた秘密がわかるまさかのオチ
この絵本、アヒルたちが物凄くかわいく描かれています。
リアル調な絵なのですが、表情や動きが物凄くかわいく、思わず触りたくなるのです。
表紙からも伝わるように、お散歩への足取りも軽く、ルンルンとした気分が伝わってきます。
池の生き物たちと遊ぶ姿も楽しそうで、頭にトンボがとまったりもしています。
色使いも優しく鮮やかで、池の自然が生き生きと描かれているのも素敵なところ。
そんな楽しそうで明るい雰囲気から一転、不穏な空気が漂います。
不気味な大きくて黒い鯉の出現です。
音もたてず、スーッと泳いでいる鯉。
一羽一羽いなくなっていく赤ちゃん。
もう、ホラー映画を観ているよう。
子どもたちも「食べられちゃった!?」「また、食べられちゃうよ!」と、まさかの展開に悲鳴をあげます。
そして、お母さんだけになり真っ暗な橋の下へ・・・。
子どもたちは必死に呼び止めます。
「入っちゃダメ―!」「危ないよ!」「後ろ見て!」
もうだめだ・・・という様子の子どもたちでしたが、お母さんが普通に出てきます。
子どもたちの頭の上には「???」が。
さらに、一羽ずつ赤ちゃんたちが帰ってきます。
さらに「?????」・・・。
さっきまでのホラーな雰囲気は全くなくなりついていけない子どもたち。
前半とのギャップが物凄いことになっています。
そんな「?」には、とても平和なオチが待っていました。
最後の意外なオチを見て、「なーんだ!」とやっと一安心。
改めて「食べられてなくてよかった~」と胸をなでおろして終わるのでした。
とても可愛くほのぼのした雰囲気からのちゃんと怖いホラーな展開。
「なんで!?」の連続が癖になる、ミステリーのような絵本です。
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