文:矢川澄子 画:市川里美 出版:富山房
春夏秋冬、晴れ、雨、雪。
どんな時も子どもたちは遊んでいます。
たくさんの子どもたちが遊ぶ中に、きっとあなたもいるはずです。
あらすじ
絵本の読み聞かせが始まります。
読み始めたのは世界中の遊びの絵本。
まずは冬に外で遊ぶ子どもたち。
おしくらまんじゅうをしたり、ローラースケートをしたり、縄跳びをしたり。
たくさんの子が、色んな遊びをしています。
でも、雨が降って来てしまいました。
みんな家の中へ入ります。
てるてる坊主を作った後は、部屋の中で遊びます。
ままごとに魔女ごっこなど、ごっこ遊びで盛り上がります。
やがて、雨がやみ虹が出ました。
外では春がやってきて、庭は花盛りです。
外では花摘み、部屋ではパンケーキを焼いてお茶の支度が進んでいます。
木の葉っぱが青々と茂るころ、木登りが始まります。
夏になれば川遊び。
疲れたら木陰でお昼寝。
羊飼いの真似をして羊を誘導したり、鳥にエサをあげているうち、秋がやってきました。
木の実を摘んだり、野菜を収穫したり、秋の実りが盛り沢山。
いがぐり落としに、落ち葉拾い。
楽しいことがたくさんあります。
そして、雪が降り出してまた冬がやってきます。
『あなたもいますよ』の素敵なところ
- たくさんの子どもと遊びの中にきっと自分を見つけられる
- 楽しい遊びの一年間
- リズミカルで気持ちのいい、自然に季節の移り変わりを感じる文章
この絵本にはとてもたくさんの遊びが出てきます。
室内遊びも、屋外遊びも出てきます。
一つのページの中にも、それぞれに違う遊びや表情を見せているたくさんの子が出てきます。
そんな遊びを見ていると、どこかに必ず自分がいます。
「あ、これ私もやった!」
「雨が降ったらいつもテルテル坊主作ってる!」
「落ち葉はスカートに集めると楽しいよね~」
など、自分がその遊びをしたことを思い出し、重ね合わせるのです。
色々な遊びを見る中で、自分がどんな遊びをしてきたのかもわかります。
一緒に読みながら、「あんなことあったよね」と遊んだ時のことを思い出したり、話したりするのがまた面白いのです。
また、遊びを通して一年間を見ることが出来るのも素敵なところです。
その季節に合わせた遊びを見ることで、冬の寒さ、春の温かさ、夏の暑さなどを思い出したり、四季の流れを感じます。
自分の好きな季節を改めて感じたり、「今度はこんな遊びしたいな」と次にその季節がくる時へ思いを馳せたり、色んな気持ちが生まれます。
「やっぱ夏がいい!川に行けるし、スイカも食べられる!」
「秋がいいな~。落ち葉とかドングリ拾うの楽しいもん」
「雪遊び楽しかったから冬がいいよ!」
など、それぞれに感じたことを伝えてくれていました。
一年間のたくさんの遊びを描くことで、とてもたくさんの気持ちを思い出し、向き合うきっかけになっているみたいです。
そんな一年間の流れは、リズミカルで気持ちの良い文章とともに進んでいきます。
この文章がとても素敵で、その遊びをしている時の子どもの気持ちをとても綺麗に表現してくれるのです。
「おーい、ごらんよ虹の橋。早く見ないと消えちゃうぞ」
「わあ、冷たいな足の裏。波と魚がくすぐるよ」
など、その時々に感じたことが、そのまま言葉になっているかのようなのです。
もう一つ、とても自然に季節の変化を表現しているのも素敵なところ。
文章の中で、春夏秋冬という言葉はほとんど使われません。
使われるのは「花盛り」「さわさわ揺れる木の梢」「静かな白い雪の道」など、なんとなく季節の流れを感じる詩的な言葉。
それと絵が組み合わさって、子どもたちはなんとなく季節の変化を感じます。
この変化の仕方が、自然の季節の変化とそっくりなのです。
自然には境目なく、少しずつ変化して気付けば次の季節になっています。
この絵本の季節の変化はそんな感じなのです。
遊びに夢中になっているうちに、気付けば次の季節になっている。
そんな遊び中心の子どもの世界が凝縮された絵本です。
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