作:千住博 出版:冨山房
ある夜、流れ星を見つけた一頭の小鹿。
流れ星を追いかけ、一夜だけの幻想的な旅。
それは、字のない、自分だけの想像の物語です。
あらすじ
深い森の中に、親子のシカが住んでいました。
ある晩、小ジカが流れ星を追いかけて、見知らぬ世界に迷い込みます・・・。
小ジカは流れ星を追いかけ、寝ている両親の元を離れ歩いていきます。
星野うつる川、ネオンの輝く街、木々の茂る森の中など、様々な場所を訪れる小ジカ。
流れ星に追いつくことは出来るのでしょうか。
『星のふる夜に』の素敵なところ
- 字がないことで自由に想像できる物語
- 地図と見比べて場所を想像する面白さ
- 本当に星空の下にいるような美しく幻想的な絵
この絵本には字がほとんどありません。
あるのは、導入部分の「小ジカが流れ星を追いかけていく」という大きな方向性だけです。
その後は、周りの様子や、宵闇の中にある小ジカのシルエットを頼りに、自分だけの物語を想像し作り上げるしかありません。
「流れ星消えちゃったね」
「どこまで行くんだろう」
「シカさんちょっと疲れてるみたい」
「きれ~いって思ってるんじゃない」
などなど、たくさんの想像と、物語が作り出されていくのです。
また、この絵本の面白いところが、ページの左下に小さな地図があることです。
小ジカが歩いていくたびに、その道程が赤い線で描かれていきます。
これにより、どこを歩いてきたかと、今いる位置がわかるのです。
この地図と現在地を照らし合わせるのがまた面白いのです。
「この川はこれじゃない?」
「この木って、これだよ!」
「先に街があるよ」
など、目印を見ながら、対応する場所を探します。
これにより、その場その場の冒険だけでなく、旅の全体像やどれだけ歩いたのかなども想像出来るのです。
そして、なにより魅力的な部分が、その絵です。
大判のページいっぱいに描かれる幻想的な絵。
そこには満点の星空と、星のうつり込む川、暗い夜の木々などが描かれます。
その星空の美しいこと。
「星空に吸い込まれそう」と言いますが、まさにその通りで、ページの中に吸い込まれそうなほど。
釘付けになってしまうのです。
ページをめくるごとに現れる新しいロケーションは、それぞれ特徴的で、様々な美しさを感じさせてくれます。
字がないことで、より絵やその中の動きに集中できる。
自分だけの物語を想像していける幻想的で美しい絵本です。
コメント