作:新美南吉 絵:鈴木寿雄 出版:フレーベル館
サルが見つけた一本の赤いろうそく。
サルはその珍しいろうそくを、花火と勘違い。
そんな勘違いから起こる、動物たちのリアクションが楽しい絵本です。
あらすじ
山から里の方へ遊びに行ったサルが、一本の赤いろうそくを見つけました。
サルは珍しい赤いろうそくを花火だと思い、大事に山へ持って帰りました。
山では大変な騒ぎになりました。
動物たちは誰も花火を見たことがなかったからです。
サルは動物たちに花火がどんなに美しいものか、話して聞かせました。
そして、夜になったら打ち上げようと決まりました。
夜になり、動物たちは山のてっぺんに集まりました。
ろうそくは木の枝に括りつけてあります。
しかし、困ったことが・・・。
誰も火をつけようとしなかったのです。
そこで、火をつけるものをくじで決めることにしました。
まずはカメが向かいます。
でも、ろうそくの側まで来ると、首が自然に引っ込んでしまい、うまく火がつけられませんでした。
次はいたちが向かいました。
果たして、火をつけることが出来るのでしょうか。
ろうそくだとわかった時の動物たちの反応やいかに。
『あかいろうそく』の素敵なところ
- 動物たちが勘違いしているとわかっている面白さ
- 動物たちのリアクションが面白い
- 静かな静かな最後の場面
この絵本では、花火ではなくろうそくであることが、最初にわかります。
そして、動物たちが勘違いしていることもわかります。
この視点の違いがとっても面白いのです。
ことあるごとに「あ~、それ花火じゃないのに・・・」というやきもき感。
動物たちが花火に期待を膨らませ、胸を躍らせるほどやきもきします。
この動物たちとの気持ちのずれが、この絵本独特の面白さを生んでいるのだと思います。
これは動物のリアクションにも当てはまります。
「ろうそくに近づくと危ない」と言われ、急いで距離を取る動物たち。
火をつけるのを怖がったり、近づいても身がすくんで火がつけられないカメ。
などなど、花火だと思い込んでいる動物たちのリアクションや、おっかなびっくり感が見ていて飽きません。
そのたびに「ろうそくだから大丈夫だよ・・・」と、面白がりつつ呆れつつ。
そんな勘違いの面白さが最後まで続くのです。
さて、そんな物語の最後。
もちろんろうそくなので、打ち上がったりはしません。
でも、ろうそくならではの雰囲気で終わります。
これまでのドタバタした雰囲気と、最後の場面の空気感の差が大きく。
なんだか不思議な気持ちです。
でも、妙に落ち着く優しい空気。
それは本当に、一本のろうそくをみんなで眺めているような感覚なのです。
勘違いしていることがわかっているからこそ、動物たちの反応が面白い。
見ていてやきもきしてしまう絵本です。
コメント