文:林木林 絵:いまいずみやすこ 出版:交通新聞社
いつもの商店街には秘密があった。
終電が終わった後の真夜中、商店街は連結して電車になる。
一体どこに行って、何をするのか・・・。
なにはともあれ、今日も発車する時間になりました。
あらすじ
駅のそばに小さな商店街がありました。
夜になり、最終電車が通り過ぎると、商店街に明かりが灯ります。
そして、商店街の店が繋がり電車になって、空へと走っていきました。
そのまま宇宙へ飛び出し、着いたところはお月さま。
お客さんは月に住んでいるうさぎです。
次にやってきたのは火星です。
お客さんはもちろん火星人。
その次は、猫の住んでいるねこぼしです。
そして、あまのまちに着くとそこには彦星が待っていました。
しかし、急いで商店街に走って来た彦星は転んでしまいます。
これから織姫と会う約束をしていた彦星は髪が乱れ、服も汚れて困ってしまいます。
そこで商店街のみんなが協力することになりました。
とこやさんが髪を整え、クリーニング屋さんが服を洗ってと、それぞれの仕事を活かします。
年に一度のデートの日。
彦星は無事待ち合わせに間に合うのでしょうか。
『おみせやさんでんしゃ』の素敵なところ
- テンポのいい優しい文章
- 細かく描かれた、躍動感のある絵
- すべてのお店がしっかり活躍してくれる
この絵本でとても特徴的なのがその文章です。
駅について開店する時の「くださいな くださいな いらっしゃいませ まいどありぃ」という言い回し。
出発する時の「○○屋さんが、○○をしてしゅっしゅっ はとどけいが ぽっぽ」など、
お店によって少しずつ内容が変わるけれど、リズムは同じ繰り返しがふんだんに使われています。
言葉選びも優しく柔らかで、わかりやすいです。
また、暖かみのあるかわいい絵も文章ととても合っています。
そして、とても細かく描き込まれています。
お店の品ぞろえや、人々の動き、実は運転手の八百屋の亭主など、見れば見るほど面白い発見が隠れています。
八百屋の亭主が特急に変わる時に、「とっきゅう」と書いた札を地味に立てかけていたり、帰ってきた商店街で宇宙人が普通に働いていたり。
それだけでなく、宇宙に飛び出していく時や、地球に帰ってくる時に、見開きかつ、縦にページを使い、遠近法も活用して、本当に宇宙に飛び出していくような感覚を与えてくれる躍動感もすごいです。
このページを見ると本当に無重力に飛び出したような感覚にさえなります。
そんな文章と絵で描かれる物語。
その中で、すべてのお店がしっかり活躍してくれるのも素敵なところ。
繋がっている商店街のお店すべてに愛着が持てて、子どもたちがそれぞれに「○○屋さんがいい。だって○○だから」とお気に入りのお店を理由付きで教えてくれます。
夢のあるお話でありつつ、しっかりとした仕事ぶりを見せてくれる絵本です。
『おみせやさんでんしゃ』のおすすめの読み方
- 絵をゆっくりと見ながら読んでいく
- セリフ以外の部分はテンポよく、毎回同じリズムで読んでいく
- 運転手のセリフは本当の電車のアナウンスのように
絵の中に色んな発見の詰まった絵本なので、ゆったりとしたペースで、ページめくりもゆっくり目に読んでいくといいでしょう。
セリフ以外の文章は語呂がよく、繰り返しになっているので、リズム感を崩さないように読んでいきましょう。
運転手の次の駅名を言う時や、「お急ぎください」というアナウンスは、本物の電車のアナウンスのように読んでいくと、電車感が出てより雰囲気を出していけるのでおすすめです。
読んでいる方も聞いている方も心地よいこの絵本。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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