文:富安陽子 絵:南伸坊 出版:福音館書店
急にタコが家に来て「遊ぼう」と言ってきた。
タコと遊ぶのなんて乗り気がしない・・・。
でも、このタコは「すっげぇ」タコだったのです。
あらすじ
ある日、海からタコのタコやんがやってきた。
タコやんは、人間の男の子しょうちゃんの家に来ると、ドアをノックした。
しょうちゃんがチェーンをかけて、ドアをちょっぴり開いてみると、そこにはタコがいた。
そのタコは「タコやんです。遊びましょ」と言ってくる。
しょうちゃんはタコと遊ぶのは嫌だったので、「ゲームしてるからまた今度」と断りました。
すると、タコやんはぺちゃんこになって、ドアの隙間から入ってきて、ゲームをやらせてくれと言ってきます。
そして、勝手にゲームを始めてしまいました。
しかし、その上手い事。
タコやんはたちまちハイスコアをたたき出しました。
「タコやん、すっげぇ!」
しょうちゃんも大喜びです。
違う遊びをすることになり、しょうちゃんとタコやんは公園へ出かけていきました。
公園では友だちのゲンちゃんがサッカーをしていました。
サッカーに入れてもらおうとすると、しょうちゃんはいいけど、タコやんはダメだと言われてしまいます。
しょうちゃんはゲームが上手いことを伝え、サッカーだってきっと上手だから入れてくれないか聞きました。
すると、キーパーとして入れてくれることに。
そのゴールキーパーの上手い事。
どんなボールも止めてしまいます。
「タコやんすっげぇ!」
サッカーをしていたみんなは大喜びです。
それから、かくれんぼをすることになりました。
ですが、みんながかくれんぼをしていると、おじさんが大きな犬を連れて公園にやってきました。
さらに、公園で「犬を放すから、帰った帰った」と言ってきたのです。
タコやんと楽しく遊んでいたみんなは、公園から追い出されてしまうのでしょうか。
『タコやん』の素敵なところ
- 物凄く素直な反応
- タコの力をフルに発揮して信頼を勝ち取るタコやん
- なんだか楽しい言葉選び
この絵本の登場人物たちは、みんな物凄く自分の心に素直です。
普通の絵本であれば、「あそびましょ」と尋ねてきたら、「いいよ」と物語が始まるでしょう。
でも、この絵本は違います。
「タコと遊ぶの嫌だな~」と断ります。
しっかりチェーンもかけておきます。
ただ、実際にタコが来たら、みんなこうするんじゃないだろうか・・・。
サッカーの時も同じです。
しょうちゃんはいいけど、タコはダメ。
きっと普通こう言います。
それぞれの反応がとってもシンプルで自分の心に正直なのです。
ただ、それはマイナス面だけではありません。
タコやんが出来ることを見せると「タコやん、すっげぇ!」と、偏見なく認めて仲間に入れてくれます。
そういう、子どもの純粋な素直さがこの絵本の大きな魅力だと思います。
また、タコやんもとっても魅力的。
断られても折れない心で、タコの能力をいかんなく発揮して、勝手に家に入ってきます。
しかし、タコやんのすごい所は、実力で「遊びたい!」と思わせるところ。
最初は困っていたしょうちゃんも、タコやんの実力を見て、「タコやん、すっげぇ!」と180度見方が変わります。
サッカーでも同じです。
タコとしての実力で、しっかりと地盤を固めていく強さ。
このすごさがタコやんの魅力なのでしょう。
さて、この絵本。
読んでいるだけで笑いが起こったり、楽しい気分になってきます。
それはなんだかおもしろい言葉がたくさん使われているからです。
一緒に言いたくなる「タコやん、すっげぇ!」
本当にタコがそこにいるような擬音「ヌルリンチョ」「ペタコラ」「ペタンチョ」
なんだかおもしろい「ちっちゃいおじさんとでっかい犬」
などなど、語感や雰囲気やノリなど、なんかおもしろくなっちゃう言葉が散りばめられていて、読んでいるとなんか楽しいのです。
「タコやん、すっげぇ!」と楽しそうに繰り返す子。
ヌルリンチョなど、タコやんが動くたびに笑っちゃう子。
「ちっちゃいおじさん!」と爆笑の子。
なんだか常に楽しい雰囲気なのです。
とっても素直な子どもとタコ友情を描く。
思わず「タコやん、すっげぇ!」と言いたくなってしまう絵本です。
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