作:せがわやすお 出版:福音館書店
桃太郎や金太郎など、みんな知ってる有名人。
でも、なぜか帽子を被ります。
その帽子を脱ぐときは・・・。
あらすじ
桃太郎が帯締めて
太刀をはき
鉢巻をして
帽子を被り・・・。
イヌとサルとキジが「あなたいつまで被っているの」と聞くと。
鬼を退治した桃太郎は帽子を脱ぎました。
金太郎がまさかり持って
クマに乗り
鉢巻をして
帽子を被り・・・。
森の動物が「あなたいつまで被っているの」と聞くと。
相撲でクマを負かした金太郎は帽子を脱ぎました。
弁慶が・・・。
『ぼうし』の素敵なところ
- 知っている人物がなぜか帽子を被っていく面白さ
- 楽しい掛け合いと繰り返し
- かっこいい、物悲しい、ほっこりとそれぞれが帽子を脱ぐとき
この絵本はいきなり「桃太郎」という超ビッグネームが出てきて、鬼退治の支度を始めます。
「どうなるんだ?」と思っていたら、なぜか帽子を被ります。
この時点でもうおもしろい。
「帽子は被らないよ!」
「なんで~」
と、みんなから総ツッコミ。
次の金太郎でも、帽子を被るのがなんとなくわかっていても、
「金太郎も被っちゃった!」
とみんなで大喜びなのです。
もう、普段帽子を被らない有名人が帽子を被るだけでも面白い。
でも、それだけでは終わりません。
絵本の中でも「あなたいつまで帽子を被っているの」とツッコミが入ります。
その答えが帽子を脱いだり、脱がなかったりまた面白いのです。
真剣に準備して、なぜか帽子を被り、ツッコまれて、帽子を脱ぐ。
この繰り返しがこの絵本の醍醐味でしょう。
帽子を被るのがわかっているのに、「やっぱり被った!」というお約束感。
そして、「いつ脱ぐんだろう」というワクワク感。
これがたまらなく面白くて楽しいのです。
さて、彼らが帽子を脱ぐ時ですが、これがまた趣深い。
桃太郎、金太郎、弁慶。
それらのお話に準じた内容になっていて、妙にしっくりくるのです。
また、これらのピリッとした雰囲気から一転、最後はとってもほっこりした帽子で終わります。
この雰囲気の変化もまた素敵で、なんだか帽子を被りたくなる魅力に溢れています。
そのおかげで、前知識がなくても楽しめますが、登場人物の人となりを知っていると、よりその生き様と帽子の親和性が感じられて深く楽しめると思います。
昔話の有名人と帽子の組み合わせで、面白さとかっこよさが際立っている。
面白さ、かっこよさ、安心感のバランスが絶妙な絵本です。
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