文:デイヴィッド・グロスマン 絵:ギラド・ソフェル 訳:もたいなつう 出版:光村教育図書
家から次々に物が消えていく・・・。
そんな事件を追うのは子どものヨナタンと犬のビバ。
ドキドキしながらも、最後は少し切ないミステリーな絵本です。
あらすじ
ある日、ヨナタンの赤いスリッパが消えた。
家じゅう探し回ったけれど見つからない。
ココアを飲むときの緑色のマグが消えた。
それから、クマちゃんも消えた。
パパのメガネが消え、ママの紫のマフラーが消えた。
「どろぼう・・・」とドキドキするヨナタンに「だったら捕まえなくちゃ!ヨナタンは我が家の名探偵さんね」とママが言った。
ヨナタンは探偵になった。
ブツを隠しそうな場所を探し回った。
子犬のビバがついてきた。
でも、なくなったものは見つからない。
ある朝、新聞が消えた。
次の日、ママの赤いひざ掛けが消えた。
ビバに手伝いを頼んだけれど、手伝ってくれずうつむいて耳をちょっと折り曲げた。
はっと、ヨナタンはひらめいた。
そして、ソファで寝たふりをした。
しばらくするとビバがテレビのリモコンをくわえ、庭に出ていった。
そのまま生垣に潜り込んだ。
そこには小さな空き地があった。
広げたママのひざ掛けの上にビバがいる。
そばにパパのメガネ、新聞、ココア用のマグ、スリッパが片っぽ、そしてママのマフラーを巻いたクマちゃん。
ビバは真面目な顔で生垣の向こうを見つめている。
ビバの視線の先には一体何があるのでしょうか。
ビバが事件を起こした理由とは。
『ヨナタンは名たんてい』の素敵なところ
- ヨナタンの心情が丁寧に描かれていて物語に引き込まれる
- ミステリーな雰囲気が漂っていて、ハラハラドキドキする。
- 犯人がわかった後の最後が切なく温かい
無くなった時、両親に「忘れたんじゃないの?」と言われ、「絶対に忘れてない」とムッとしたり、
クマちゃんが消えた時、「クマちゃんとビバと一緒にソファで丸くなるのが大好きなのに」と大切な思い出を描いたり、
どろぼうを混乱させようと紛争したり。
閃いた時にはあんまりすごくておもらししそうになることも。
そんな心模様が丁寧な文章の表現と、繊細な絵で表現され、自然とヨナタンと一緒に真剣になぞ解きをしています。
順番に消えていくたび、どこでなくしたのか考察したり、家族で話したりする場面によって、ミステリーな雰囲気もしっかりと漂っています。
それらが合わさって、見ている子どもはみな眉間にしわを寄せ真剣に考えます。
そして、最後にビバが犯人だとわかってほっとしたところに最後の仕掛けが。
その理由と、それを知ったヨナタンの行動がこの物語を本当に素敵な作品にしていると思います。
読んだ後、心がキュッとしつつもほっこりするミステリー絵本です。
『ヨナタンは名たんてい』のおすすめの読み方
- ヨナタンと両親の声を使い分けて読む
- ヨナタンの場面は無くなった悲しみと不安を感じている様子で
- ビバが犯人だとわかった後は、落ち着いた様子でゆっくりと
両親とのやり取りの場面では、どれが誰のセリフかわかりづらくなりやすいので、声を使い分けわかりやすく読んでいきましょう。
ヨナタンがなくなったものについて考えたり、調査している場面では大切なものがなくなった悲しみ、どろぼうがいるかもしれないという不安が入り混じった重たい様子で読んでいくとよりミステリーな雰囲気を出せます。
そして最後にビバを見つけた後は、落ち着いた様子で読み、二人が生垣の向こうを見つめてる時間を表現するように絵を見る時間を作ってからページをめくりましょう。
落ち着いた雰囲気の中で余韻を残しつつ終わるのがよいと思います。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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