作:ふくいりえ 出版:大日本図書
ある日、怪物を見つけ追いかけていくと、そこは図書館だった。
でも、普通の図書館とはちょっと違う。
本の中を出入りできる図書館だったのです。
あらすじ
ある日、ウサギのうっさーが家を出ると、不思議な足跡を見つけた。
追いかけてみると、怪物が歩いていた。
怪物の尻尾に乗った小さな怪物が、おいでおいでをしているように見えたので、うっさーはこっそりとついていくことにした。
川を越え、森を抜け、たどり着いたところは大きな木。
そこには扉があって、中に入っていくと図書館だった。
ドキドキしながら足跡の主に話しかけてみると、歓迎してくれた。
小さな怪物のことを話すと、一冊の本を渡してくれる怪物。
なんとその本から、小さな怪物は現れた。
と思ったら、他の怪物たちも本からたくさん飛び出してきたのだ。
この図書館では本の中の住人が、出たり入ったりして遊んでいるらしい。
怪物による図書館の案内が終わり広場に戻ってみると、本から出てきた怪物たちが退屈して暴れ始めていた。
そこで、小さな怪物が笛を吹き、怪物たちを集めて隣の部屋へ。
一体なのが始まるのでしょうか。
『かいぶつのとしょかん』の素敵なところ
- 漫画調の動きのあるページ構成
- 描き込まれた本や怪物たち
- 絵本の中と外が自然に繋がる魅力的な世界
この絵本の一番の魅力は、なんといっても細部まで描き込まれた本や怪物たちだと思います。
膨大な数の本、たくさんの数えきれない怪物たち。
それらが大切に一つ一つ描き込まれているのです。
本棚に置かれる膨大な蔵書たちは、色とりどりの背表紙だけでなく、表紙が見えるように置いてある本もあります。
それらはなんの本かわかるほどに、絵や文字がしっかりと描かれているのです。
中には見たことがある本もちらほら。
そんな遊び心も絵本好きにはたまらないところでしょう。
「あ、これ家にある絵本だ!」と気付いた子の喜びようは、宝物を発見したかのようでした。
本だけでなく、怪物たちの描き込みも相当なもの。
ケンカをしたり、雷を出したり、眠っていたり・・・。
それぞれが特徴的な行動をしています。
怪物同士も表情豊かに関わり合っていて、関係性がなんとなくわかったりします。
そんな怪物たちの行動を見ていると、どんな特徴や技を持っているのかや、どんな性格なのかがなんとなくわかってくるから面白い。
「こいつは氷を使えるんだよ!」
「この子はのんびりやさん」
など、怪物たちへの愛着と想像が広がっていくようでした。
また、この描き込まれた絵をさらに魅力的にしてくれているのが、漫画調のページ構成でしょう。
このページ構成のおかげで、1ページの中に細かな動きが出て、一つ一つの場面が躍動感あるものになっています。
うっさーが歩く、図書館までの長い道のり。
木の中の階段を下っていくドキドキ感。
怪物が少しずつ集まってくる様子。
などなど、冗長にならず、でも細かな部分までわかるように描かれているのです。
これにより、キャラクターたちが生き生きとより魅力的に映るのです。
さて、そんなキャラクターたちですが、もの凄く自然に本の中と外を行き来します。
ちょっと公園に行くくらいの感覚です。
本の中に戻っても、元に戻る感じではありません。
本の中に遊びに行く感じなのです。
本の外が楽しそうなら外に行き、中が楽しそうなら本に入る。
そんな風に、境界線を感じさせず、自然に行き来するのです。
そして、絵本を読むことが、絵本の中にいるキャラクターたちとの最高の遊びになっているのも、本当に素敵だなと思います。
個性豊かで魅力的な怪物たち。
そんな怪物たちと、一緒に本を楽しむことが出来る不思議な絵本です。
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