文:竹下文子 絵:アヤ井アキコ 出版:あかね書房
お金持ちでなんでも持ってるモッテルさん。
もしも、それが全部なくなってしまったら。
どんな生活がモッテルさんを待っているのでしょう。
あらすじ
カッテル・モッテルさんはお金持ち。
なんでも買って、なんでも持っています。
屋敷の中は買い集めたものが一杯。
ガレージにもたくさんの車が並んでいます。
でも、モッテルさんは車に乗りません。
眺めているだけなのです。
モッテルさんの奥さんマーダさんも、色々なものを買って集めています。
洋服や宝石などで一杯です。
マーダさんは毎日着飾って、新しい服を買うために出かけていきます。
モッテルさんの子どもテルルちゃんと、モットくんも色々なものを集めています。
おもちゃや人形、たっぷりのお菓子。
モッテルさんの家族は、物が一杯あり過ぎて、毎日ケンカをしていました。
ところがある日。
とても大きな嵐がやってきました。
お屋敷で働いている人たちはみんな避難しましたが、モッテルさんたちは動こうとしません。
留守の間に泥棒に入られるのを心配していたのです。
その時、嵐がお屋敷の屋根を吹き飛ばしました。
それと一緒に、モッテルさんたちが集めたものも全て吹き飛ばされ・・・。
嵐が過ぎた頃には、お屋敷の中は空っぽ。
壁と窓とドアしかありませんでした。
途方に暮れるモッテルさんたち。
そこへ心配した村の人たちが駆けつけてくれ・・・。
『なんでもモッテルさん』の素敵なところ
- 所狭しと並んだ、たくさんの物たち
- モッテルさん一家の表情の変化
- 所々に挟まれている小さなネタ
この絵本を開いてまず感じるのが、その物の多さでしょう。
部屋中に敷き詰められた物、物、物。
絵画に彫刻、帽子に洋服、おもちゃにお菓子。
その光景は圧巻です。
ついついどんなものがあるのかじっくり眺めてしまいます。
欲しいものだってたくさんあります。
なんだか、見ているだけで面白いモッテルさんのお屋敷は、美術館や博物館のようなのです。
でも、そこにいるモッテルさん家族は対照的に楽しそうではありません。
目の下にはクマが出来、いつも仏頂面。
そしてみんなケンカしています。
なんだか窮屈そう。
それが一気に変わる瞬間が、嵐で全てが吹き飛ばされた後。
がらんとした屋敷は、物で埋め尽くされていたのとは対照的に、もの凄い解放感。
モッテルさんたちの表情も、物がすべて無くなって、途方に暮れているはずなのに、なんだか前よりもすっきりしたような表情になっています。
さらに最後の場面ではこれまで見せたことがないであろう表情になっていて、前半の閉塞感と後半の解放感の違いがとても対照的。
すっきりとした爽やかさがすごく素敵なのです。
さて、そんなお話の中には、小さなネタが散りばめられているのも面白いところ。
金庫の中にお金がたくさん入っていることや、犬が犬小屋になにかを集めていることを教えてくれたりします。
それがあとで、中身が飛ばされたり、何を集めていたかわかるなど、伏線になっているのです。
子どもたちも「内緒のお金が飛ばされてる!」「犬はこれ集めてたのか」など、伏線があるからの反応をしっかりしていました。
極めつけが皮肉たっぷりのネタ。
これはきっと大人じゃないと面白さがわかりませんが、思わず「ふふっ」と笑ってしまいました。
物を持っている時と失った時の、対照的な描き方で、物を持っているだけが幸せではないことを感じさせてくれる絵本です。
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