てんぐのはうちわ(4歳~)

絵本

文:香山美子 画:長新太 出版:教育画劇

天狗からもらった(?)羽団扇。

それは鼻を高くしたり、低くしたりできる不思議な団扇でした。

それを使って、もんたは悪知恵を働かせ・・・。

あらすじ

あるところに、もんたという若者がいました。

がらくた市でざるを買った帰り、峠の大きな木の下で、ざるを頭に被って休んでいるところでした。

すると、木の上で動くものが。

もんたは何の気なしに、「天狗かあ?」と言ってみると、なんと本当に天狗が木の上にいたではありませんか。

天狗が「俺の姿が見えるのか」と聞くと、もんたは「千里眼のメガネを持っているか見える」と言って、ざるの目からあちこちを見回しました。

天狗は木から降りてきて、ざると羽団扇を交換してくれと言ってきました。

その団扇は、鼻を高くしたり、低くしたりできるというのです。

もんたは交換に応じ、交換するとすぐに逃げていきました。

逃げたもんたは早速、団扇の力を試してみることに。

和尚さんの鼻をこっそり伸ばしてみたのです。

結果は大成功。

大喜びのもんたは団扇を持って旅に出かけました。

しばらく行くと、長者様の家で美しい娘が花見をしている所に出くわしました。

そこでもんたは、こっそり団扇を仰ぎ、娘の鼻を低くしたのです。

娘の鼻は、縮んで小さな豆粒ほどになったからさあ大変。

大騒ぎになったところで、もんたは「たかひくお鼻治しでござい」とよばわりました。

早速呼ばれたもんたは、娘の鼻を戻します。

もんたはこうして、お金をたくさんもらったのでした。

いい気分のもんたは河原で休むことにしました。

涼しい風に、もんたがうとうとしていると、一匹のハエがもんたの顔にとまります。

もんたは団扇でハエを追っているうちに、寝ぼけてつい言ってしまいました。

「鼻、鼻、たこうなれ・・・」

すると、もんたの鼻はどんどん伸びて、ついに天の上まで。

さて、その頃天の上では・・・。

『てんぐのはうちわ』の素敵なところ

  • 感心してしまうもんたの悪知恵
  • ちょっと間抜けでかわいい天狗
  • 適応力の高すぎるもんた

この昔話は、ほとんどすべてもんたの悪知恵で出来ています。

どんな状況でも悪知恵を働かせ、自分のいいように持っていくもんた。

その悪知恵には、善悪を通り越して、感心させられてしまいます。

同時に、今度はどんなことをするのだろうと、期待もしてしまうのです。

しかも、しっかりと効果を試してみたり、かなり計画的だったりと、よく考えられているのも面白いところです。

もんたの頭の良さがよくわかり、より感心してしまいます。

さて、きっかけとなったのは天狗との出会いでした。

この天狗が見た目に反して、素直で間抜けでかわいいのです。

いかめしい顔に、大きな体。

その姿はまさに威厳のある天狗です。

でも、千里眼のメガネと聞いて興味津々。

子どものように食いついてきます。

しかも欲しすぎて、羽団扇と交換までしてくれます。

ただのざるだと知っている子どもたちは必死。

「騙されてるよ!」

「それただのざるだよ!」

と止めようとしてくれていますが、声は届かず・・・。

嬉しそうにざるを覗き込んでいます。

この姿がまたかわいい。

このやり取りが、なんとも間抜けでこの絵本の魅力的なところです。

そんな天狗へも物怖じしない、度胸と対応力を見せたもんた。

最後の場面ではさらに驚かされることに。

その適応力と、なんでも楽しめる心には脱帽で、清々しさすら感じます。

最後のページの絵には、もんたの人間性が詰っているようで、「こんな生き方もいいな~」と思ってしまうのです。

次々と出てくる悪知恵と、機転の良さに悪戯心をくすぐられる。

もんたの魅力に引っ張りだこな昔話絵本です。

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