作:中川ひろたか 絵:日隈みさき 出版:岩崎書店
子ブタがカラスにバカにされ、空を飛んだら意外に飛べた。
空を飛んでいたら、なぜか体が大きくなっていく。
最後にはボートになっちゃったというお話です。
あらすじ
ある日、子ブタが草の根っこを食べていたら、カラスが来てバカにしました。
「ピンク色でみっともないから、空でも飛んで冷やすがいい」と言われたので、子ブタは崖をよじ登り崖の端から飛んでみることに。
すると、意外とうまく飛べました。
飛んでいるとカモメに会い「とっても大きい」と言われます。
子ブタは気にも留めていませんでしたが、町に降りてみると本当に大きくなっていて、町は模型のようでした。
そこにさっきのカラスがやってきて、「みっともないから、川にでも行って冷やすがいいさ」と言いました。
ブタが川まで行くと、そこにはすでに他の動物たちが体を冷やしていました。
ゴーヤわに、カバナス、トマっとりなど、みんな動物と食べ物がくっついた姿をしています。
ブタが動物たちに話しかけると、動物たちはブタをゴムボートと勘違い。
川に入ったブタの上に乗りこんできました。
みんなを乗せたゴムブタボートの川下りが始まります。
ゴムブタボートは一体この先どうなるのでしょう。
元の子ブタに戻る日は来るのでしょうか・・・。
『ゴムブタボート』の素敵なところ
- 予想外過ぎる物語展開
- 奇想天外な世界観
- 流され続けていたら丸く収まっていた
この絵本を一言で表すなら「予想外」です。
もう最初から度肝を抜かれます。
カラスにバカにされ崖を登り始める子ブタ。
まさかのダイブ!
これには子どもたちも「危ない!」「だめだよ~!」と顔を覆います。
・・・が、飛べてしまう子ブタ。
「え?飛べてる」
「なんでー!」
と、子どもたちもびっくりです。
さらに気付いたら大きくなっていたり、ゴムボートにされたりと、何の脈絡もなく大きな事件が当たり前のように巻き起こっていくのです。
予想外の連続過ぎて、驚いたり、あっけに取られたりと、子どもたちも忙しそう。
休む暇がありません。
しかし、それだけでは終わらないのがこの絵本。
さらにツッコミどころを用意してくるのです。
それが奇想天外な世界観。
子ブタ、カラス、カモメ、ウシ、イヌと、普通の動物たちが出て来ていたのに、なぜか川には謎の動物たちの群れ。
ここだけ動物と食べ物が一体化しています。
さらに川下りを始めると、おばあさんが洗濯をしている所に流れてくる桃。
海賊を追い回すおばあさん。
カメと踊る浦島太郎・・・。
などなど、急に昔話の世界観が入ってきます。
昔話の世界観の中、謎の動物を背中に乗せて、川を下っていく巨大な豚。
まさにカオスが広がっています。
でも、不思議なことに予想外の展開に流され続けてきたところ、なぜか最後は丸く収まってしまいました。
理由もわかりません、脈絡もありません。
だけど、平和に丸く収まったんだから全てよし!
これはジェットコースターから降りた時のような感覚かもしれません。
そんな中、子どもからひと言。
「川に入って体が冷えたから戻ったんじゃない?」
怒涛の展開に流されず、もの凄く冷静に見ていた子が一人だけいたのでした。
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