モグラくんとセミのこくん(4歳~)

絵本

作:ふくざわみこ 出版:福音館書店

同じ土の中で暮らす、モグラとセミの子。

ある日、2匹は偶然出会い意気投合。

ずっと一緒に暮らそうと約束します。

夏が来たとしても・・・。

あらすじ

土の中の家に住むモグラくん。

ある日、土の中を散歩していると、セミの子とトンネルの中で出くわしました。

聞くと、トンネルを掘って遊んでいたら、迷子になってしまったそう。

モグラくんはお腹を空かせたセミの子くんに、ご飯を食べさせてあげました。

すっかりモグラくんの家が気に入ったセミの子くん。

それを見て、モグラくんも「ずっとここにいるといいよ」と言い、二人は一緒に暮らすことになりました。

二人で暮らし始めてから、冬が来て、春になり、夏が過ぎ、秋になりました。

ある日のこと、セミの子くんの背中にひびが入り、中から少し大きくなったセミの子くんが出てきました。

心配するモグラくんに、セミの子くんは1年に一度殻を脱いで大きくなることを教えました。

来年もう一度脱ぐと、セミになるということも。

それを聞いてモグラくんは、セミの子くんがセミになって飛んでいってしまうことを思い、寂しい気持ちになりました。

それを見て、セミの子くんは言いました。

「ここが好きだから、ずっと土の中にいるよ」と。

それからまた秋が来て、冬が来て、春が来て、夏になりました。

そんなある日、セミの子くんは「部屋の中が狭くない?」と言い出しました。

さらには「暗くない?」「息が苦しくない?」とも。

そして、そのまま動かなくなってしまいました。

モグラくんは、もうセミの子くんが土の中にはいられないことに気が付きました。

急いでモグラくんを土の上へ連れていきました。

セミの子くんは無事に殻を脱ぐことが出来るのでしょうか。

『モグラくんとセミのこくん』の素敵なところ

  • セミの幼虫時代にスポットを当てた物語
  • セミの子くんとモグラくんの楽しそうな暮らし
  • 美味しそうな食べ物とタンポポ茶

この絵本ではセミの幼虫時代にスポットが当てられています。

セミの一生や、成虫になるところを描いた絵本は多いですが、土の中での過ごし方を描いたものは少ないように思います。

しかも、一つの季節ごとにどんな暮らしをしているかが、丁寧に描かれているのも素敵なところ。

冬は落ち葉の布団にくるまり、春はタンポポの根っこをかじり、夏は地下の泉で涼みます。

セミの子くんたちの様子だけでなく、その頃の地上の様子が描かれているのも面白いところです。

見ていると自分たちが遊んでいる時に、地下ではどんなことをしているのか想像してしまいます。

もちろん、そんな地下での暮らしが魅力的なのは、モグラくんと2人でいるからです。

一緒に布団にくるまって、追いかけっこをして、水に映った顔を見て「ぼくたちなんだか似ているね」と話します。

一緒に料理を作って、ご飯を食べ、タンポポのお茶を飲む。

2人でいる時間の、本当に楽しそうなことといったらありません。

読んでいる誰もが、「こんな風に暮らしたいな~」と思ってしまうでしょう。

そんな2人の姿をみていると、いつかセミになることはわかっていても、「ずっと一緒にいて欲しいな」と思ってしまうのです。

さて、この楽しい暮らしに欠かせないのが、美味しそうな食べ物たち。

カボチャのまんじゅう、クッキーなどが葉っぱのお皿に並べられます。

秋にはサツマイモに栗や小豆も使い、スイートポテトまで作ります。

そのこんがりとして美味しそうなこと。

そして、そこに必ず添えられるのがタンポポのお茶です。

もう、見ているだけでお呼ばれされたくなること間違いなし。

思わず「わ~、美味しそう~」と言葉とよだれが出てしまいます。

でも、この料理もきっと、2人で楽しそうに作って食べているからこそ、より魅力的に見えているのだと思います。

モグラくんとセミの子くんの、自然をふんだんに活かした二人暮らし。

その楽しさと幸せを、一緒にたっぷりと味わうことが出来る絵本です。

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