作:ふくざわゆみこ 出版:福音館書店
同じ土の中で暮らす、モグラとセミの子。
ある日、2匹は偶然出会い意気投合。
ずっと一緒に暮らそうと約束します。
夏が来たとしても・・・。
あらすじ
土の中の家に住むモグラくん。
ある日、土の中を散歩していると、セミの子とトンネルの中で出くわしました。
聞くと、トンネルを掘って遊んでいたら、迷子になってしまったそう。
モグラくんはお腹を空かせたセミの子くんに、ご飯を食べさせてあげました。
すっかりモグラくんの家が気に入ったセミの子くん。
それを見て、モグラくんも「ずっとここにいるといいよ」と言い、二人は一緒に暮らすことになりました。
二人で暮らし始めてから、冬が来て、春になり、夏が過ぎ、秋になりました。
ある日のこと、セミの子くんの背中にひびが入り、中から少し大きくなったセミの子くんが出てきました。
心配するモグラくんに、セミの子くんは1年に一度殻を脱いで大きくなることを教えました。
来年もう一度脱ぐと、セミになるということも。
それを聞いてモグラくんは、セミの子くんがセミになって飛んでいってしまうことを思い、寂しい気持ちになりました。
それを見て、セミの子くんは言いました。
「ここが好きだから、ずっと土の中にいるよ」と。
それからまた秋が来て、冬が来て、春が来て、夏になりました。
そんなある日、セミの子くんは「部屋の中が狭くない?」と言い出しました。
さらには「暗くない?」「息が苦しくない?」とも。
そして、そのまま動かなくなってしまいました。
モグラくんは、もうセミの子くんが土の中にはいられないことに気が付きました。
急いでモグラくんを土の上へ連れていきました。
セミの子くんは無事に殻を脱ぐことが出来るのでしょうか。
『モグラくんとセミのこくん』の素敵なところ
- セミの幼虫時代にスポットを当てた物語
- セミの子くんとモグラくんの楽しそうな暮らし
- 美味しそうな食べ物とタンポポ茶
この絵本ではセミの幼虫時代にスポットが当てられています。
セミの一生や、成虫になるところを描いた絵本は多いですが、土の中での過ごし方を描いたものは少ないように思います。
しかも、一つの季節ごとにどんな暮らしをしているかが、丁寧に描かれているのも素敵なところ。
冬は落ち葉の布団にくるまり、春はタンポポの根っこをかじり、夏は地下の泉で涼みます。
セミの子くんたちの様子だけでなく、その頃の地上の様子が描かれているのも面白いところです。
見ていると自分たちが遊んでいる時に、地下ではどんなことをしているのか想像してしまいます。
もちろん、そんな地下での暮らしが魅力的なのは、モグラくんと2人でいるからです。
一緒に布団にくるまって、追いかけっこをして、水に映った顔を見て「ぼくたちなんだか似ているね」と話します。
一緒に料理を作って、ご飯を食べ、タンポポのお茶を飲む。
2人でいる時間の、本当に楽しそうなことといったらありません。
読んでいる誰もが、「こんな風に暮らしたいな~」と思ってしまうでしょう。
そんな2人の姿をみていると、いつかセミになることはわかっていても、「ずっと一緒にいて欲しいな」と思ってしまうのです。
さて、この楽しい暮らしに欠かせないのが、美味しそうな食べ物たち。
カボチャのまんじゅう、クッキーなどが葉っぱのお皿に並べられます。
秋にはサツマイモに栗や小豆も使い、スイートポテトまで作ります。
そのこんがりとして美味しそうなこと。
そして、そこに必ず添えられるのがタンポポのお茶です。
もう、見ているだけでお呼ばれされたくなること間違いなし。
思わず「わ~、美味しそう~」と言葉とよだれが出てしまいます。
でも、この料理もきっと、2人で楽しそうに作って食べているからこそ、より魅力的に見えているのだと思います。
モグラくんとセミの子くんの、自然をふんだんに活かした二人暮らし。
その楽しさと幸せを、一緒にたっぷりと味わうことが出来る絵本です。
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