作:くろだかおる 絵:たけがみたえ 出版:ポプラ社
最初はお豆腐一丁の買い物でした。
でも、勘違いが勘違いを生み、どんどん増えるお豆腐。
一体何丁になってしまうのか、気になり過ぎる絵本です。
あらすじ
ケンちゃんは、お母さんに買い物を頼まれました。
醤油と、ゴマ油と、お豆腐一丁です。
ケンちゃんがスーパーで買い物をした帰り道、携帯にお母さんから電話がかかってきました。
「お豆腐をもう一丁買ってきて」と言うのです。
しかし、ケンちゃんはこの後、友だちと遊ぶ約束をしていました。
そこで「重たすぎて持てない」と嘘をついて断りました。
お母さんは仕方なく、ケンちゃんの双子の妹に「お豆腐が一丁足りないから、もう一丁買ってきて」と頼みました。
でも、双子は「お豆腐が一丁じゃ足りないから、二丁買ってきて」と言われたと勘違い。
少し遠いお豆腐屋さんに行くと、お豆腐を一人ニ丁ずつ買いました。
合わせて四丁です。
帰りに友だちとばったり会い、少しお話を始めました。
家では双子が中々帰ってこないので、しびれを切らし、双子の下の三つ子の弟におつかいを頼みました。
双子は張り切りスーパーに行くと、双子と同じ勘違いをし、一人二丁ずつ、合計六丁買いました。
どんどん増えていくお豆腐・・・。
家には何丁のお豆腐が集まってくるのでしょうか。
『おとうふ2ちょう』の素敵なところ
- 連鎖していく勘違い
- 詰まっている数字の面白さ
- ひっそり感じる罪悪感
この絵本の面白いところは、なんと言っても勘違いの連鎖でしょう。
お豆腐を一丁買ってくるだけでいいのに、それぞれに勘違いして2丁買おうとしてしまいます。
それだけでも「違うよ!一丁でいいんだよ!」と子どもたちは必死に止めるのに、まさかの一人二丁買ってきます。
もう子どもたちは大慌て。
「えー!?なんでー!?」
「そんなにいっぱいいらないよ!」
「一個だけでいいって言ってたのにね」
と、驚いたり困ったり。
そこへお母さんが追加発注するからたまりません。
「もっと増えちゃうよ!」と、みんなやきもきしてしまいます。
この自分たちは知っているのに、絵本の中では勘違いが繰り広げられていく感じがたまらなく面白いのです。
そして、ここに数字が加わることでより面白くなっていきます。
一丁が二丁になり、それを二人で買ったから四丁になり・・・。
と、どんどん増えていく感覚。
足し算と、掛け算が組み合わさる面白さが、そんな計算を知らない子どもでも体感できます。
どんどん膨らむお豆腐の数。
頭の中で足してみるのも面白いですし、なんとなく増えていく感覚だけでも面白い。
数字を使いつつも、難しいことを考えずにその面白さを味わえる懐の深さが、この絵本の素敵なところです。
さて、そんな勘違いと数字のドタバタ劇ですが、最後の場面でまさかの心理描写が描かれます。
それがケンちゃん。
大量のお豆腐を見て、「嘘をつかずに、お豆腐を買ってきていれば・・・」と人知れず罪悪感に胸が痛みます。
これにより、ドタバタしていたのが、ちょっとしんみりしっとりするのです。
楽しく食卓を囲むみんなと、ケンちゃんの心境のギャップが哀愁を誘います。
「ケンちゃん頑張って」と言う気持ちで終わるとは、思ってもみませんでした。
一つの嘘から生まれた勘違いと、勘違いにより増えていくお豆腐が楽しい。
数字と計算とバタフライエフェクトの面白さが詰った絵本です。
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