作:荒井洋行 出版:フレーベル館
水の魔法が使える男の子クリップ。
涙で階段を作ったり、その可能性は無限大。
読めば一緒に、魔法を使いたくなる絵本です。
あらすじ
丘の向こうの不思議な家に、4人の家族が住んでいました。
お父さんは発明家のノマ。
お母さんは魔法使いのホルケット。
お姉ちゃんのソケットに、弟のソケットです。
ある日、お母さんがソケットに、「オムレツを作るから卵を取ってきて欲しい」と言いました。
卵は湖に浮かぶ島の、卵の実る木にあるのだそう。
ですが、そこは竜が見張っていて、卵を取ってきたものは誰もいないと言うのです。
クリップは、ご褒美に新しい魔法を教えてもらえるというので、張り切って引き受けました。
イヌのピックルも一緒です。
湖にやってくると、なんと湖の水がなくなっていました。
島の周りを竜が飛んでいるのが見えます。
ひとまず島に近づき、クリップは竜に自己紹介しました。
すると、竜はモリ―だと名乗り、パパの代わりに卵を見張っているのだと言いました。
大切な卵だからあげられないとも。
さらに竜は「最近雨が降らないから、湖の水がなくなり、卵も実らなくなってしまった」と泣き出します。
クリップは困ってしまいましたが、水の魔法を試してみることにしました。
クリップが魔法を使うと、竜の涙が空へ舞い上がり、水の階段になったのです。
クリップたちは階段を上り、雲の上へと行きました。
雲の上には街がありましたが、なんだか静まり返っています。
街の中を歩いていくと、どこからか声が聞こえてきたので行ってみました。
そこでクリップたちが見たものとは・・・。
卵を無事持ち帰ることは出来るのでしょうか。
『クリップとみずのまほう』の素敵なところ
- とても素敵なファンタジーの世界
- まるで生き物のような水と仲良くなる魔法
- 一緒に言いたくなる魔法の呪文
この絵本の世界観は、とても王道なファンタジー。
魔法が使えて、竜がいて、雲の上には街がある。
とっても王道だけれど、誰もが憧れる世界観だと思います。
その世界を、ソケットとピックルと一緒に冒険する。
それだけでワクワクしてしまうのです。
涙の階段を登ったり、竜の背中に乗ったりと、「こんなことしてみたいな」も詰まっています。
これは王道なファンタジーだからこその感覚だと思います。
そして、その世界で使われる魔法がまた素敵です。
それは「水を操る魔法」ではなく、「水と仲良くなる魔法」なのです。
水と仲良くなり、友だちのように協力してくれる魔法です。
これは絵本の中でも生き生きと表現されています。
竜の涙の一粒一粒が小さな人型になり、クリップのを下から持ち上げてくれたりします。
嬉しいことを祝福するように、一緒に喜んでくれたりもします。
このクリップと魔法と水の関係が、この絵本のとても素敵なところだと思います。
また、魔法を使う時の呪文も特徴的でリズミカル。
一緒に言いたくなる、楽しいものになっています。
小さな魔法は「シュー、テー、トン」。
強めに使うと「シュシュー、テー、トトン」。
もっと強くなると「プシュー、シュテー、トトトーン!」
と、場面に合わせて力も入ります。
見ている子も、合わせて力が入ります。
まるで、本当に魔法を使っているみたい。
成功すると、自分がやったかのような満足げな顔をしているのも、面白いところです。
ソケットが水と仲良くなる魔法を駆使して、ファンタジーな世界を冒険していく。
そんなソケットと一緒に、自分も魔法を使えるようになる絵本です。
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