文:大沼鉄郎 絵:沼野正子 出版:福音館書店
日頃、街中で見かける合図。
クラクション、手信号、灯台の灯り・・・。
探してみると、普段よりももっとたくさんの合図が見つかります。
その合図にはどんな意味があるのでしょう。
あらすじ
ある日、友だちが家に来て、野球に誘われました。
でも、それを聞いていた妹も一緒に来てしまいました。
小さな妹がいると自由に野球が出来ません。
そこで、次の日は妹にばれないよう、合図を考えることにしました。
翌日、家の前まで行くと、鏡に光を反射させ、合図を送ります。
見事に妹にばれないよう野球に行くことが出来ました。
野球の帰り道、工事現場の前を通ると、作業員の人がクレーン車に手を振って合図をしています。
言葉で言うより、手で合図した方がよくわかるからです。
交差点では信号が、合図を出してくれています。
そこへ来た救急車はサイレンを鳴らして、合図を出していました。
家に着くと、妹が怒っています。
けんかする二人に、お母さんが口に指を当て「シーッ」の合図。
お客様が来ていたからです。
他にも犬を呼ぶ合図や、呼び鈴、車のハザードなど、色々な合図があります。
さて、明日は家族で田舎に行く日です。
目覚ましの合図で、朝は起きなければいけません。
兄妹は、田舎へ行く途中、田舎へ行ったあと、どんな合図を見つけていくのでしょうか。
『あいず』の素敵なところ
- 兄妹と一緒に自然と合図に気付ける仕組み
- 世の中は合図で溢れていることに気付く
- 合図の色々な性質に気付く
この絵本の一番素敵だと思うところは、兄妹が生活の中で合図に気付くことを通して、見ている方も自然に合図に気付けるところです。
そもそも、合図に興味を持つきっかけは、妹にばれないように秘密の合図を考えたこと。
これにより、自然と合図には色々な使い方があり、便利であることがわかります。
その帰り道で、色々な合図があることに気付きます。
その後も、生活の中で自然に合図に気付き、触れていきます。
この自然な流れが、自分の生活を思い返して、「あ、あれも合図だ」と気付かせて視野を広げてくれるのです。
そうして視野を広げていくと、世の中は合図に溢れていることに気付きます。
クラクション、ロッカーの名前、コンビニの入店音・・・。
子どもたちと話していくと、無限に合図が出てきます。
少し視点を変えただけで、当たり前のものが、色々な意味を持ってくる面白い体験が出来るのも、この絵本の素敵なところです。
こうして見つけていくと、同時になんの合図かを考えることに繋がります。
「声が聞こえない場所だから、手で合図するんだ」
「危ないから、大きい音出すんだよ」
「字が読めない子でも、わかるようにかな」
中には灯台の灯りの意味を知って、
「そのために光ってるのか~」
と納得している子もいたりしました。
なんの合図かを考えることで、いろんな場面や、立場について考えることにも繋がります。
合図と言う枠を飛び出して、自分の住んでいる世界を考えるきっかけになるのも、この絵本のすごいところなのです。
兄妹と一緒に暮らしの中にある、たくさんの合図を見つけることが出来る。
その合図を通して、自分の暮らす世界への視野を広げてくれる絵本です。
コメント