文:さねとうあきら 画:いのうえようすけ 出版:教育画劇
道に迷いたどり着いた、山の中の大きな屋敷。
そこには綺麗な三人の娘。
極楽のようなその場所には、恐ろしい秘密があった・・・。
あらすじ
昔、山道を歩いていた旅人がいた。
旅人は道に迷い、気付けば夜になっていた。
どこかに泊めてくれる宿はないものかと探していると、ちらちらとした灯りが見えた。
行ってみると、そこは大きなお屋敷だった。
人がいる様子はなかったが、声をかけてみると、3人の綺麗な女の人が現れた。
3人は旅人を歓迎し、一人は布団の用意を、もう一人はごちそうの用意をすると出ていった。
最後の一人は、風呂に案内してくれた。
疲れ切っていた旅人が、ありがたく風呂に入ろうとすると、それを止める声が。
声をかけてきたのは、風呂釜の影にいた老婆だった。
老婆は旅人に「ここから出ていかないと、ひどい目にあう」と言ってきた。
しかし、旅人は信じずに風呂に入ろうとする。
そこで老婆は、三毛猫の姿になった。
その三毛猫は、旅人の家の隣に住んでいた三毛猫だった。
三毛猫は、旅人の家に遊びに行くたび可愛がってくれたから、その恩を返したいのだと言う。
三毛猫が言うには、「ここは猫屋敷で、湯に浸かったり、ご飯を食べたら毛が生えて、猫になってしまう」のだそう。
忠告を聞いた旅人は、裏口からこっそり屋敷を出て山を降りた。
旅人が山道に出ると、後ろの方から叫び声が上がった。
屋敷の方から3人の娘が、湯桶を振り回し追いかけてくる。
旅人は家まで逃げ切ることが出来るのでしょうか。
『やまのねこやしき』の素敵なところ
- 「お約束」ならではの不気味さと怖さ
- 怖すぎる追いかけっこ
- 危機一髪だった後遺症
このお話は、まさに昔話の「お約束」から始まります。
道に迷い、暗くなってしまった所で見つけた一軒の家。
そこに暮らす親切な人。
大層なもてなし。
昔話をよく聞いている子なら、この時点で気づきます。
「絶対、なにかある・・・」と。
「やまんばかな」「絶対猫だよ」と、正体を考えます。
「泊まらない方がいいよ」「逃げた方がいいって」と、底知れぬ不気味さと怖さを感じます。
この、「絶対、何か起きる」という不気味さや怖さを楽しむのが、「お約束」の面白さなのでしょう。
もちろん、何か起こります。
やっぱり、もてなしには裏があり、思いっきり追いかけてきます。
そして、この絵本。
追いかけられる場面がめちゃくちゃ怖い。
見開き1ページ、文字はありません。
しかし、女たちの形相の恐ろしいこと。
旅人の顔の必死なこと。
まだ、猫の姿に戻ってくれた方が愛嬌がありそうなものなのに、鬼の形相をした人間の姿で迫ってくるので物凄い怖いのです。
さらに、ゾクッとさせてくるのが最後の場面。
旅人にはある後遺症が残ります。
そこから、もし風呂に全身浸かっていたら・・・。
もし、ご飯を食べてしまっていたら・・・。
という想像が膨らみ、ゾクッとさせてくるのです。
昔話の「お約束」と、追いかけられる王道の怖さをたっぷり味わえる。
さらに、ゾクッとするひんやりした怖さまで味わうことが出来る昔話絵本です。
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