作:村上康成 出版:絵本塾出版
リュックをしょっての山登り。
とてもとても大変だけど、登り切った時の達成感は格別。
そんな達成感を一緒に味わえる絵本です。
あらすじ
おにぎりが三個ずつ入ったリュックを持って、モリオはお父さんと電車に乗る。
着いたところは、高い高いカッパ山。
頂上目指して出発!
森の中はシーンとしている。
カラマツやカケスの羽など、面白いものを色々見つけながら歩いていく。
かなり歩いているが、まだ着かない。
急な上り坂になる前に、麦茶とチョコレートで休憩を入れた。
頂上まではあと少し。
しゃべることが出来な程の上り坂。
息を切らせながら進んでいく。
「はあ、はあ」
「はあ、はあ」
そして、ついに頂上に。
頂上でしばらく寝転び空を見つめる。
落ち着いてきたら、待ちに待ったおにぎりの時間。
お母さんはどんな具にしてくれたのでしょう。
『リュックをしょって』の素敵なところ
- 本当に山の中にいるような情景描写
- 思わず力が入ってしまう最後の上り坂
- 一緒に山を登ったような達成感
この絵本を読んでいると、本当に山の中にいるような気持ちにさせられます。
それは山ならではの情景が、五感を刺激するように描写されているからだと思います。
「電車を降りると山のにおいが一杯」という、町との空気感の違いや山ならではのにおい。
「シーンとしてて、なにかがぼくを見ている」という、山の中の静けさや、動物や鳥に見られている感覚。
これらを通して、本当に山の中にいる感覚にさせてくれるのです。
山に行ったことのある子などは「山のにおいするする」「山の中って静かだよね」と、山に行った時のことを思い出しているようでした。
そんな道中のモリオの姿もリアルです。
最初は元気で走って登り、でもだんだん疲れてくる。
休憩での麦茶やチョコレートの美味しさは格別。
その中でも、最後に待ち受ける上り坂での描写は、本当に自分の登っている気持ちになってきます。
子どもの様子を見るお父さん。
声をかけるけれど、疲れで返事が出来ないモリオ。
少し登っては、ひざに手をつき一休み。
汗をかきながら「はあ、はあ」と、息遣いしか口からは出てきません。
周りの音も聞こえず、自分の息遣いだけが聞こえ、ただ登る感覚。
それがこの絵本にはあるのです。
「はあ、はあ」に合わせ、自分の体にも思わず力が入ります。
この没入感から、頂上に出た時の、空が一面に広がる瞬間。
親子の達成感溢れる顔に負けないくらい、子どもたちの顔にも達成感が浮かびます。
思わず「着いたー!」と喜ぶ子も。
親子と一緒に、自分も山を登り切ったようなこの感覚。
これがなによりもこの絵本の素敵なところだと思います。
本当に山の中にいるような感覚の中で、山登りの楽しさ、大変さ、それを乗り越えた達成感。
その全てを、体験したかのように味わえる山登り絵本です。
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