あきちゃんとかみなり(3歳~)

絵本

作・絵:木村晃彦 出版:福音館書店

すぐに泣いてしまう泣き虫さん。

でも、そんな自分よりも泣き虫さんがいたらどうするでしょう?

さらにそれが、とっても怖いかみなりだったら・・・。

あらすじ

あきちゃんはとっても弱虫です。

転んでは泣き、歯医者では「嫌だよー」とお母さんを困らせます。

今日もあきちゃんは、チョコレートを落としてしまい泣いています。

すると、泣き声を聞きつけて、空からかみなりが降りてきました。

泣き虫のおへそを食べようというのです。

へそを取られてはたまらないと、あきちゃんは泣きながら、へそまんじゅうをかみなりにあげました。

へそまんじゅうがあまりに美味しいので、かみなりはへそまんじゅうをもっと食べたくなりました。

そこで、へそまんじゅうを100個持ってくるよう言いました。

あきちゃんは急いで、お母さんに相談しました。

へそを取られては大変と、お母さんはすぐにへそまんじゅうを用意してくれました。

かみなりにへそまんじゅうを持っていくと、かみなりはへそまんじゅうを抱えて、空へと帰っていきました。

雲の上に帰ったかみなりは、毎日へそまんじゅうをたくさん食べました。

すると、とうとう虫歯になってしまったのです。

かみなりはまたあきちゃんのところにやってきました。

そして、泣きながら虫歯をなんとかしてくれと頼んできました。

あきちゃんは大きなかみなりが泣いているので、笑いそうになりました。

かみなりがあんまり泣くので、あきちゃんは歯医者さんに連れていってやることにしました。

果たして、かみなりの歯は治してもらえるのでしょうか。

『あきちゃんとかみなり』の素敵なところ

  • 怖さの中に愛嬌のあるかみなり
  • 立場が逆転する面白さ
  • 歯医者の後の清々しさ

この絵本のかみなりは、かなりいかつい見た目をしています。

堀の深い顔、大きくて筋肉質な体など、どこを取ってもかみなりそのもの。

黒雲に乗って、しっかりへそを取りにやってきます。

ですが、その仕草は愛嬌たっぷり。

すべり台の下に座ってへそまんじゅうを食べたり、

へそまんじゅう100個を待つ間、滑り台を滑っていたり、

雲の上では寝転んで、テレビを見ながらへそまんじゅうを食べていたり・・・。

それをいかつい姿と、厳めしい顔のままやっているので、妙におもしろいのです。

そして、そんなかみなりが虫歯のせいで泣くはめに。

泣き虫だったあきちゃんと、完全に立場が逆転してしまうのです。

大泣きするかみなりをみて、なんだかおもしろくなってしまうあきちゃん。

前半と後半のまったく逆な展開に、みんなも笑ってしまいます。

「今度はかみなりが泣いてる!」

「かみなりのほうが泣き虫じゃん」

と、かみなりを怖がっていた子も、口々に言い出します。

その後、歯医者から出てきたかみなりとあきちゃん。

その清々しい表情と言ったらありません。

そこには最初から泣き虫などいないようでした。

夕焼けの中、壮大な映画が終わった後のような、この余韻もこの絵本の素敵なところだと思います。

怖いかみなりとの、おへそを巡るいつもの展開かと思いきや・・・。

まさかまさかの立場が逆転するという、予想外過ぎる物語です。

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