作・絵:木村晃彦 出版:福音館書店
すぐに泣いてしまう泣き虫さん。
でも、そんな自分よりも泣き虫さんがいたらどうするでしょう?
さらにそれが、とっても怖いかみなりだったら・・・。
あらすじ
あきちゃんはとっても弱虫です。
転んでは泣き、歯医者では「嫌だよー」とお母さんを困らせます。
今日もあきちゃんは、チョコレートを落としてしまい泣いています。
すると、泣き声を聞きつけて、空からかみなりが降りてきました。
泣き虫のおへそを食べようというのです。
へそを取られてはたまらないと、あきちゃんは泣きながら、へそまんじゅうをかみなりにあげました。
へそまんじゅうがあまりに美味しいので、かみなりはへそまんじゅうをもっと食べたくなりました。
そこで、へそまんじゅうを100個持ってくるよう言いました。
あきちゃんは急いで、お母さんに相談しました。
へそを取られては大変と、お母さんはすぐにへそまんじゅうを用意してくれました。
かみなりにへそまんじゅうを持っていくと、かみなりはへそまんじゅうを抱えて、空へと帰っていきました。
雲の上に帰ったかみなりは、毎日へそまんじゅうをたくさん食べました。
すると、とうとう虫歯になってしまったのです。
かみなりはまたあきちゃんのところにやってきました。
そして、泣きながら虫歯をなんとかしてくれと頼んできました。
あきちゃんは大きなかみなりが泣いているので、笑いそうになりました。
かみなりがあんまり泣くので、あきちゃんは歯医者さんに連れていってやることにしました。
果たして、かみなりの歯は治してもらえるのでしょうか。
『あきちゃんとかみなり』の素敵なところ
- 怖さの中に愛嬌のあるかみなり
- 立場が逆転する面白さ
- 歯医者の後の清々しさ
この絵本のかみなりは、かなりいかつい見た目をしています。
堀の深い顔、大きくて筋肉質な体など、どこを取ってもかみなりそのもの。
黒雲に乗って、しっかりへそを取りにやってきます。
ですが、その仕草は愛嬌たっぷり。
すべり台の下に座ってへそまんじゅうを食べたり、
へそまんじゅう100個を待つ間、滑り台を滑っていたり、
雲の上では寝転んで、テレビを見ながらへそまんじゅうを食べていたり・・・。
それをいかつい姿と、厳めしい顔のままやっているので、妙におもしろいのです。
そして、そんなかみなりが虫歯のせいで泣くはめに。
泣き虫だったあきちゃんと、完全に立場が逆転してしまうのです。
大泣きするかみなりをみて、なんだかおもしろくなってしまうあきちゃん。
前半と後半のまったく逆な展開に、みんなも笑ってしまいます。
「今度はかみなりが泣いてる!」
「かみなりのほうが泣き虫じゃん」
と、かみなりを怖がっていた子も、口々に言い出します。
その後、歯医者から出てきたかみなりとあきちゃん。
その清々しい表情と言ったらありません。
そこには最初から泣き虫などいないようでした。
夕焼けの中、壮大な映画が終わった後のような、この余韻もこの絵本の素敵なところだと思います。
怖いかみなりとの、おへそを巡るいつもの展開かと思いきや・・・。
まさかまさかの立場が逆転するという、予想外過ぎる物語です。
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