けちんぼおおかみ(4歳~)

絵本

文:神沢利子 絵:赤羽末吉 出版:偕成社

けちんぼをすると罰が当たるという教訓。

それが痛いほどにわかる昔話です。

でも、ちょっと罰が強すぎて、オオカミが可哀そうな気も・・・。

あらすじ

腹を空かせたおおかみどんが、海辺で死んだクジラを見つけました。

食べても食べてもなくならず、たらふく食べた後に、咥えられるだけ持って帰ることにしました。

帰る途中に人間の村を通りかかりました。

立派な家の前で二人の兄弟が遊んでいます。

お兄さんがおおかみどんを見つけると、声をかけてきました。

肉をわけて欲しいというのです。

ですが、おおかみどんは知らんぷりで行こうとします。

すると、弟までが「肉をわけてください」と頼みます。

それでも知らんぷりして行こうとすると、兄さんが怒って怒鳴りました。

「やい、けちんぼ。山へ帰ってもろくなことはないぞ。」と。

さらに追いかけて怒鳴ります。

「はんの木の林でも、やなぎの林でも、露が雨になり、みぞれになって降って来て、そこでお前はぶっ倒れる。土を被って、お前の背中に草木が生えて、鳥や獣が住み着いて、しっこしてフンたれて、息が詰まってそこでおしまいだ。」と。

おおかみどんはそんなことは気にせずに、山に帰っていきました。

ところが、はんの木の林に来かかった時、おおかみどんの口から勝手に言葉が飛び出しました。

「はんの木の露、落ちれ落ちれ」

驚く間もなく、本当に露が雨のように降ってきます。

あの兄弟の言っていたことが、本当に起こってしまうのでしょうか。

『けちんぼおおかみ』の素敵なところ

  • 予言されているからこそのおもしろさ
  • とてもわかりやすい教訓
  • おおかみどんの心に染みる最後の一言

この絵本では、兄妹が予言したことが、本当にオオカミの身に降りかかります。

この、先に展開が知らされているというのが面白いのです。

最初はオオカミと一緒で、半信半疑だった子どもたち。

しかし、はんの木の林で本当に予言通りになってしまいます。

「本当だったんだ!」

と思うと同時に、オオカミの行く末が心配になってきます。

予言の通りに行ったら死んでしまうのですから。

でも、残酷なことに一つ一つ予言は的中していきます。

わかっている結末に、徐々に向かっていくやきもき感と、どうしようもない感。

これを楽しめるのが、この絵本の醍醐味だと思います。

そして、救いのない勧善懲悪だからこその、わかりやすい教訓もこの絵本の魅力です。

きっとオオカミの姿を見て、「けちんぼはしないようにしよう」と思うでしょう。

純粋過ぎるわかりやすさは、昔話ならではの魅力なのではないでしょうか。

ちょっとオオカミが可哀そうな気もしますが・・・。

そんなオオカミが最後の場面で残す言葉。

これが実体験に基づいているからか、物凄く心に染みます。

ここまでのオオカミの姿を見ているからこそ、その言葉の重みを感じます。

この言葉を受け、子どもたちもしみじみと、

「けちんぼはしないようにしよう・・・」

とつぶやいているのでした。

けちんぼをしたことで、ひどい目に合うオオカミの姿とその言葉。

それらを通して、「けちんぼはよくない」という教訓を感じさせてくれる昔話絵本です。

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