ぼくのいのち(6歳~)

絵本

作・絵:安藤由紀 出版:復刊ドットコム

虐待を受けている子ども。

そして、大人。

その両方に読んでもらいたい。

心と命の大切さと、その逃げ方・助け方が描かれた物語です。

あらすじ

朝起きてくると、部屋が荒れていて、お母さんは起きてこなかった。

ぼくは妹のるうちゃんにパンを焼いてあげた。

お父さんは時々モンスターになる。

お父さんは怒鳴り、殴る。

お母さんが止めてもやめない。

ぼくは何もできない。

最近学校に行くと眠くなる。

椅子に座ると、夢の中に吸い込まれる。

夢の中ではどこにでも行く。

海の中にもぐったりして、たくさんの生き物に会いに行く。

大人になったら、冒険するんだ。

ぼくは夢の中で神様に会った。

神様はぼくに伝えたいことがあると言った。

神様は空に広がる命の地図を指さした。

花も動物も水晶も、一つから始まって、お互いに繋がって、お互いに大事にして、生きることを喜んでいた。

神様は言った。

「大人の世界のことは責任を感じなくていい。お前は悪くないんだよ。」と。

涙が溢れた。

神様はぼくを抱きしめてくれた。

家に帰ると、お母さんが泣きながら電話をしていた。

お父さんが起きてくると、電話を切って夕飯になった。

塾から帰ると、お父さんが怒鳴っていて、キッチンに行くと、るうちゃんが転がっている。

ぼくはぞっとして「もうやめて!」と叫んだ。

その後、目の前が真っ暗になった。

病院に行くと、「そのあざはどうしたの?」って聞かれたけど、何も言わなかった。

ぼくはもう、あの家には帰りたくなかった。

ある日、お父さんが会社に行くと、ぼくたちは荷物をまとめておばあちゃんの家に向かった。

お母さんは働き始め、ぼくは新しい学校に行った。

友だちが出来て、毎日サッカーをする。

サッカーの帰りにお母さんが迎えに来た。

お母さんは言った。

「お母さんが幸せなことはなんだかわかる?」

ぼくはお母さんの想いを聞いた・・・。

『ぼくのいのち』の素敵なところ

  • DVの中でぐちゃぐちゃになっていく子どものリアルな心
  • DVへの現実的な対処法
  • この絵本の読み方やケアの仕方が書かれている

この絵本はDVの中で生きる子どもの気持ちを、痛いほどに表現しています。

嫌だな、怖い、眠れない。

妹のために頑張らなくちゃ、生まれなきゃよかった。

大人になったら・・・。

DVにあうたび、恐怖、責任、自責・・・。

色々な感情が渦巻いて、押しつぶされそうになる姿が、「ぼくの言葉」と絵を通してストレートに伝わってくるのです。

そんなDVから逃れる日がやってきます。

その対処法は、おばあちゃんの家に行くこと。

とても現実的な対処法です。

話し合いで解決するのなら、きっとDVまで発展しないでしょう。

話し合おうとして、逆上される可能性もあります。

安全に状況を変えるには、こっそりと逃げるしかないのです。

DVの被害者の現実がここでもリアルに描かれています。

しかし、リアルに描かれているからこそ、当事者の気持ちに寄り添うことが出来、希望となるのでしょう。

これらの問題は非常に複雑で、繊細です。

特に当事者には無神経に触れられたくない部分でしょう。

でも、放っておいてはいけない問題でもあります。

そこで、この絵本には注意書きと、アドバイスがあとがきとして載っています。

全体に啓蒙として読む場合、支援者が読む場合、子どもに読み聞かせする場合。

それぞれで意味合いが変わり、読んだ後のケアの仕方も変わります。

なので、誰かに読む場合、必ずあとがきを読んでから、読んであげるようにしてください。

同時に、大人がDVについて考えるための項目や、助けを求める手段も載っています。

子どもだけでなく、大人がDVから逃れるきっかけにもなると思います。

悩みがある方や、その側にいる方には、ぜひ読んでみてもらいたい絵本です。

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