作:長新太 出版:佼成出版社
ある日、水の中から怪獣がぬっと現れた。
それはどんどん伸びていく・・・。
月に届くほど伸びた時、ついにその正体が!
あらすじ
山の奥に深い湖があった。
そこには昔から、怪獣がいると言われていた。
湖のほとりに、一人の男がいて、10年も怪獣が出てくるのを待っていた。
ある夜、ついに怪獣が頭を出した。
男が夢中で写真を撮っていると、その頭はどんどん伸びて、長い首が出てきた。
その首は月に届きそうだ。
どんな怪獣だろう。
首長竜のような怪獣だろうか。
魚のような怪獣だろうか。
怪獣がさらにぐーんと大きくなり、男は胸がどきどきして破裂しそうになった。
すると、二本目が伸びてきた。
そしてその正体が明らかに・・・。
『つきよのかいじゅう』の素敵なところ
- ついにUMAを見つけたドキドキワクワク
- 予想の斜め上過ぎる正体
- そこはかと漂う物悲しさ
いるのかいないのかわからない怪獣。
この絵本では、それがついに出てきた瞬間に立ち会えます。
テンションの上がる男とともに、伝説を目の当たりにするこの興奮。
「うわ!なんか出てきた!」
「怪獣の頭だよ!」
「でっけー!」
と、子どもたちの心境も、激写する男とシンクロします。
どんどん伸びていき、いよいよ体が見えそうだと思った時。
まさかの二本目が伸びてきて、その正体が明らかに・・・。
それは予想の斜め上過ぎるものでした。
テンションの下がる男。
「なんだそりゃ~」
と、ずっこける子どもたち。
でも、よく考えたら大発見なのですが、落胆が大きすぎたようです。
鳴り響く轟音が徐々に小さくなるとともに、怪獣らしきものも沈んでいき、最後に残ったのは静かな夜の水面と男のがっくりとした背中のみ。
序盤の盛り上がりが嘘のような、物悲しい空気が流れます。
この最初の熱気と、ため息が聞こえてきそうな空気感の落差が、この絵本の何とも言えず素敵なところです。
怪獣を発見したドキドキワクワクと、予想外過ぎる正体への驚き。
そのギャップ感が、ジェットコースターのように楽しいナンセンス絵本です。
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