つきよのかいじゅう(4歳~)

絵本

作:長新太 出版:佼成出版社

ある日、水の中から怪獣がぬっと現れた。

それはどんどん伸びていく・・・。

月に届くほど伸びた時、ついにその正体が!

あらすじ

山の奥に深い湖があった。

そこには昔から、怪獣がいると言われていた。

湖のほとりに、一人の男がいて、10年も怪獣が出てくるのを待っていた。

ある夜、ついに怪獣が頭を出した。

男が夢中で写真を撮っていると、その頭はどんどん伸びて、長い首が出てきた。

その首は月に届きそうだ。

どんな怪獣だろう。

首長竜のような怪獣だろうか。

魚のような怪獣だろうか。

怪獣がさらにぐーんと大きくなり、男は胸がどきどきして破裂しそうになった。

すると、二本目が伸びてきた。

そしてその正体が明らかに・・・。

『つきよのかいじゅう』の素敵なところ

  • ついにUMAを見つけたドキドキワクワク
  • 予想の斜め上過ぎる正体
  • そこはかと漂う物悲しさ

いるのかいないのかわからない怪獣。

この絵本では、それがついに出てきた瞬間に立ち会えます。

テンションの上がる男とともに、伝説を目の当たりにするこの興奮。

「うわ!なんか出てきた!」

「怪獣の頭だよ!」

「でっけー!」

と、子どもたちの心境も、激写する男とシンクロします。

どんどん伸びていき、いよいよ体が見えそうだと思った時。

まさかの二本目が伸びてきて、その正体が明らかに・・・。

それは予想の斜め上過ぎるものでした。

テンションの下がる男。

「なんだそりゃ~」

と、ずっこける子どもたち。

でも、よく考えたら大発見なのですが、落胆が大きすぎたようです。

鳴り響く轟音が徐々に小さくなるとともに、怪獣らしきものも沈んでいき、最後に残ったのは静かな夜の水面と男のがっくりとした背中のみ。

序盤の盛り上がりが嘘のような、物悲しい空気が流れます。

この最初の熱気と、ため息が聞こえてきそうな空気感の落差が、この絵本の何とも言えず素敵なところです。

怪獣を発見したドキドキワクワクと、予想外過ぎる正体への驚き。

そのギャップ感が、ジェットコースターのように楽しいナンセンス絵本です。

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