文:もとしたいづみ 絵:石井聖岳 出版:講談社
なにかを待っている男の子。
すると、色々な動物が集まってきて、一緒に待っていることに。
でも、一体何を待っているのでしょう。
あらすじ
小さな男の子たろうが、一人で川のほとりにいました。
すると、犬がやってきて言いました。
「何してるの?」
たろうは「待ってるの」と答えます。
そこで犬も一緒に待つことにしました。
たろうと犬が待っていると、カワウソがやってきました。
カワウソも二人が待っているのだと聞くと、一緒に待つことにしました。
太郎と犬とカワウソが待っていると、クマがやってきました。
そして、クマも一緒に待つことになりました。
たろうと犬とカワウソとクマが待っていると、河童が踊りながら川を下ってきました。
河童は踊りながら行ってしまいました。
犬がついに聞きました。
「それでさ、一体何を待っているの?」
その時です。
ものすごいスピードで川を下ってくるものが。
それは待っていたものなのでしょうか。
『まってました』の素敵なところ
- 仲間が増える繰り返し
- 何を待っているのか気になるワクワク
- 待ちに待った後の「まってました」
この絵本の楽しいところは、次々と一緒に待つ仲間が増える繰り返しです。
「何してるの?」
「待ってるの」
「一緒に待っててもいい」
「いいよ」
という、可愛い決まり文句とともに、増えていく仲間たち。
この安心感のある繰り返しと、賑やかになっていく様がとっても楽しいのです。
また、仲間が増えるたび、待っている間にしていることが変わるのも面白いところ。
一緒に木の実を食べたり、砂遊びをしたり、歌ったり。
待っている姿にも、文章にはなっていませんが、ストーリー性を感じて、想像が膨らみます。
さて、みんな自然に待ちますが、誰も何を待っているか知りません。
なぜか誰も聞きません。
見ている子どもたちも、
「何を待ってるんだろう?」
と、疑問が積み上げられていきます。
「何を待ってるの?」と、聞いて欲しいのに、誰も聞いてくれないモヤモヤ感。
これもこの絵本の素敵なところです。
なぜなら、引っ張りに引っ張ったこの疑問が、最後に勢いよく解決されるからです。
「それでさ、一体何を待っているの」と、ついに聞いてくれる犬。
子どもたちも待ちに待った質問に「それそれ!」と大喜び。
同時に現れる待っていたもの。
待ちに待たされ、溜めに溜められた「それ」が現れた時、心の底から言ってしまうのです。
「まってました!」と。
さらにそこからの解放感と勢いのある展開。
モヤモヤが一気に吹き飛ばされ、とてもすっきりと完全燃焼で終わります。
この感覚が、この絵本の一番楽しく、素敵なところだと思います。
可愛い繰り返しで増えていく、可愛い仲間たちとともに待つのが楽しい。
待った分だけ、「まってました」が大きく、楽しくなる絵本です。
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