いしゃがよい(4歳~)

絵本

作:さくらせかい 出版:福音館書店

ある日見つけた小さなパンダ。

一緒に暮らすことにしましたが、体が弱く医者通いが必要です。

遠くの医者まで、今日も自転車で医者通い。

あらすじ

ある日、山へキノコ狩りに来たエンさんは、泣いているパンダを見つけました。

何を聞いても「ファ ファ」と泣くだけ。

エンさんは、そのパンダをファンファンと名付け、育てることにしました。

体の弱いファンファンは、お腹が痛いと泣きました。

エンさんは自転車で、ふた山越えて、医者に連れていきました。

帰りはエンさんが歌を歌ってくれ、ファンファンは自転車の後ろでぐっすりねんねです。

体の弱いファンファンは頭が痛いと泣きました。

エンさんはまた自転車で医者通い。

帰りにエンさんが歌を歌ってくれると、ファンファンも一緒に歌います。

医者通いが続くうち、ファンファンはすっかり大きく、元気になりました。

エンさんの仕事を手伝います。

そして、長い月日が流れていき・・・。

『いしゃがよい』の素敵なところ

  • 少しずつ成長していく繰り返し
  • リズムとテンポのいい歌うような文章
  • 人生が凝縮された素敵すぎる物語

この絵本は医者へ通い、帰りに歌を歌ってくれる繰り返しで出来ています。

そして、繰り返されるたび時が経ち、ファンファンが成長していきます。

最初は小さく、帰りに寝ていたファンファン。

少し大きくなり、一緒に歌を歌うファンファン。

エンさんとほとんど同じくらいまで成長するファンファン。

繰り返しのおかげで、時の経過が自然と感じられるのです。

また、文章も繰り返しにぴったりの、歌うようなものになっています。

リズム感と、テンポ感がとても気持ちよく響きます。

特にエンさんが歌ってくれる歌が素敵。

「この子 誰の子 パンダの子 山の 麓で 泣いてた子 エンファン エンファン ペダル こぎ こぎ 帰ります」

この歌を歌うたび、エンさんとファンファンの絆が強くなっていくのを感じるのです。

さて、そんな物語の結末は、とても深く素敵なものでした。

大きく、元気になったファンファン。

ファンファンが成長するということは、エンさんはその反対。

この絵本には成長と、衰えの両方がしっかりと描かれているのです。

でも、悲しかったり寂しかったりするものではありません。

そこには、これまでの積み重ねが、しっかりと息づいているのです。

エンさんとファンファンが過ごした時。

その過ごし方。

関係性。

そんな長い長い人生を、この短い絵本に凝縮しているのです。

エンさんとファンファンの、仲の良い姿を見守っていく。

優しさと、大変さと、幸せと、可愛さと、時の重み・・・。

たくさんのものを感じさせてくれる絵本です。

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