作:長谷川集平 出版:文研出版
夜に聞こえる風の音。
「何か外にいるのかも?」と思い、不安になったりすることも。
いや、もしかしたら本当にいるのかもしれません。
あらすじ
ある夜、男の子が寝ているお父さんに詰め寄った。
外で「びゅわんびゅわん」いっている、音の正体が気になったからだ。
男の子は「あれは怪獣に違いない」と言った。
「街に向かって飛んでいく音」だと。
名前はトリゴラス。
鳥の怪獣だ。
トリゴラスは大きい。
秘密兵器はトリゴラ・ガス。
とても強くて、街はもうめちゃくちゃ。
そして、とうとう見つけるのだ。
トリゴラスの目的地を・・・。
『トリゴラス』の素敵なところ
- どんどん膨らんでいく想像
- 怪獣映画さながらの迫力
- 本当の所はわからないモヤモヤ感
この物語は、一人の男の子の想像から始まります。
夜中に外から聞こえる、「びゅわんびゅわん」という音。
お父さんはめんどくさそうに「風の音だ」と言いますが、男の子は信じません。
怪獣の飛ぶ音だという想像から、大きさ、秘密兵器、暴れ方まで、どんどん想像が広がります。
そこには想像ならではの設定が、目白押しなのも素敵なところ。
秘密兵器の名前が「トリゴラ・ガス」と小学生男子なネーミングセンス。
暴れ方は「もう、めちゃくちゃや。まち、ぐちゃぐちゃや」と大雑把に大暴れ。
目的も小学生男子の想像な感じが、ふんだんに感じられるものになっています。
さて、想像の怪獣トリゴラスですが、絵本の中での迫力は凄まじく、まるでゴジラのような往年の怪獣映画のようです。
ビルの上を悠々と羽ばたく姿。
街へ放射するトリゴラ・ガス。
崩れる街。
逃げ惑う人々。
燃える街で、ミサイルを撃つ防衛隊・・・。
まさに怪獣映画のワンシーンのような暴れっぷり。
この「まさに怪獣!」という、ベタな感じに子どもも大人もテンションが上がってしまいます。
子どもたちからも、
「トリゴラスつえー!」
「電車食べちゃってる!」
「かっけぇー!」
とロマン溢れる声が上がっていました。
そんな物語の最後は現実に戻ってきます。
「想像だったんだろうな」と思いつつも、本当に風の音なのかはわかりません。
「もしかしたら・・・」と思わせてくれる、絶妙なモヤモヤ感を残してくれます。
この、いないとも言い切れないモヤモヤ感が、とても楽しいのです。
怪獣映画さながら、純粋に怪獣の暴れっぷりを楽しむことができる。
それと同時に、一緒に想像を膨らませる楽しさを味わえる絵本です。
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