ちょろりんととっけー(3歳~)

絵本

作:降矢なな 出版:福音館書店

トカゲの兄弟二人だけでの初めてのお出かけ。

地図を見ながら、森の中を頑張って進んでいく二人。

しかし、途中で地図を落としてしまい・・・。

あらすじ

ある日、トカゲのちょろりんへ、いとこのちょさりんとおじさんから手紙が届きました。

それは「夏休みになったら、遊びにおいで」というものでした。

夏休みになり、ちょろりんは一人でおじさんの家へ行くことにしました。

一人で行くのは初めてです。

お母さんはお弁当を、じいちゃんは地図を描いて持たせてくれました。

いよいよ出発と言う時に、弟のとっけーがついてこようとしましたが、まだ小さいので置いていくことにしました。

おじさんの家へは、森を抜け、谷を下り、川を一つ渡らなければなりません。

じいちゃんは地図を描きながら「川の近くは物騒な場所だから、暗くなる前に橋を渡ってしまうんじゃよ」と言っていました。

ちょろりんは速足で進んでいきました。

森の真ん中まで来た辺りで、物音がしたので振り向くと、とっけーが立っていました。

こっそりついて来てしまったのです。

とっけーがどうしてもというので、ちょろりんは連れていくことにしました。

やっと山を抜けた時、もうお弁当の時間を過ぎていました。

二人は急いでお弁当を食べることにしました。

キャラメルしか持ってこなかったとっけーに、ちょろりんは肉団子を一つわけてあげました。

食べ終わると、急いでまた歩き出します。

暗くなる前に橋を渡らなければいけません。

夕方近くにあり、やっと橋へたどり着きました。

橋を渡ると、分かれ道です。

ちょろりんが地図を確認していると、とっけーが自分も見ようと手を出して来ました。

ちょろりんの手と、とっけーの手がぶつかったのその時、地図が風に飛ばされてしまいました。

地図は川に落ち、どんどん流されていきます。

ちょろりんはとっけーを突き飛ばし、夢中で地図を追いかけました。

しかし、とうとう地図は見えなくなってしまいました。

ちょろりんは途方に暮れながら、「とっけーなんか連れてくるんじゃなかった」と思いました。

同時に、とっけーがいないことにも気が付きました。

ちょろりんはとっけーを探しながら戻っていくと、橋の近くに人影を見つけました。

急いで土手を駆けあがりましたが、そこにいたのはお地蔵様。

辺りはすっかり暗くなっています。

ちょろりんは心臓がドクドクしてきました。

突然、ちょろりんの上に巨大なものが飛び掛かってきました。

イタチです。

ちょろりんは尻もちをついて、立ち上がることが出来ません。

ちょろりんはこのまま食べられてしまうのでしょうか。

そして、とっけーも食べられてしまったのでしょうか。

『ちょろりんととっけー』の素敵なところ

  • 長い旅と時間の迫るドキドキ感
  • 表情豊かなちょろりん
  • まさかの救世主が渋くてかっこよすぎる

この絵本では、おじさんの家まで冒険の道のりが描かれています。

道中、弟がいることもあり、色々なことが起こります。

ズボンに穴が空いたり、弟がお弁当を持ってなかったり、地図が飛ばされてしまったり。

しかし、その中でも旅全体に緊張感を与えてくれているのが、時間です。

最初に家族から伝えられる目安の時間。

お母さんからは「お日さまがさんかくやまのてっぺんにきたら、お弁当にしなさいね」。

じいちゃんからは「暗くなる間に橋を渡っていしまうんだよ」。

と、ある程度のタイムリミットが告げられているのです。

でも、とっけーが来たことで、少しずつ旅が遅れます。

森を抜けた頃には、お日さまはさんかくやまのてっぺんを通り過ぎています。

子どもたちは、次の橋に間に合うか心配になってきます。

「間に合うかな?」

「暗くなっちゃうよ・・・」と。

橋についた頃には夕方近く。

何とか間に合ったと思っていた瞬間、地図が飛ばされてしまいます。

そして、戻ってきた頃には明らかに辺りが暗くなって来ているのです。

この冒険のワクワクと一緒に、「間に合うかな?」というドキドキ感を、ちょろりんと共有できるのが素敵なところです。

そんなちょろりんは、とても表情豊か。

旅の途中で、本当に様々な表情を体全体で表現してくれます。

胸を張って得意げな表情。

急いで弟を助けに行く慌てた表情。

ズボンに穴が空いて困った表情。

地図が飛ばされビックリした表情。

などなど、そのどれもが尻尾までフルに使い、その時の心境を表現しています。

だからこそ、どんな気持ちなのかがストレートに伝わってきて、より物語の中に入り込んでいけるのです。

さて、辺りが暗くなり、イタチに襲われてしまったちょろりん。

そこに現れたのは意外過ぎる救世主でした。

しかも、その見た目と裏腹に、もの凄くいぶし銀で貫禄のあるかっこよさ。

こんなにかっこよく描かれたのを見たことがありません。

子どもたちも最初は笑いがありましたが、段々とそのかっこよさがわかってきたようで、

「かっこよかったね・・・」

「強いんだね!」

と、最後には尊敬の眼差しで見ていたのが面白いところです。

兄弟の冒険を通して、トカゲの目線で森の中を歩き回ることが出来る。

ドキドキワクワクと、お兄ちゃんの苦労を味わえる絵本です。

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