文:内田麟太郎 絵:西村繁男 出版:童心社
泣く子も怖がるオバケたち。
でも、オバケだってゾ―っとしたい時がある。
そこで、オバケがオバケに化けて肝試しをすることに。
あらすじ
海から上がってきたタコが、ある家の中に紛れ込んだ。
なんと、そこはオバケたちの家。
たくさんのオバケたちが住んでいた。
でも、そこにいたオバケは暑さでみんな、汗だらだら。
たまらず、大入道が怒鳴りつけた。
「ぞ、ぞ―っと寒くなるようなオバケに化けんかい!」と。
しかし、キョトンとするオバケたち。
オバケがオバケに化けるなんて、聞いたこともなかったからです。
そこで、大入道は自分が手本を見せることにしました。
呪文を唱えると・・・。
なんと、平たい折り紙で作られたような姿になったのです。
それを見ると、怖すぎて、みんな白目でひっくり返りました。
次に変身するのはカッパです。
カッパも呪文を唱えると・・・。
やっぱり、折り紙のように。
またまた、みんな怖がります。
さらに化け猫、赤鬼青鬼、ろくろ首にのっぺらぼうと続きます。
オバケたちは、オバケに化けたお互いを見て・・・。
『おばけもこわがるおばけ』の素敵なところ
- ヘンテコなオバケに化けたオバケの姿
- 一緒に唱えたくなる呪文
- 落語のようなオチ
この絵本の特徴的なところは、なんと言っても、オバケに化けたオバケの姿。
どんな怖いオバケになるのかと思いきや、平べったい、折り紙で作ったような、ヘンテコで可愛い姿になっています。
子どもたちも、これにはびっくり。
「なんだこれー!?」
「変なオバケになってるー!」
と、大笑い。
でも、オバケたちの反応は違います。
本気で怖がっているのです。
この反応のギャップがまた楽しく。
「全然怖くないじゃん!」
と、怖がらない自分たちを誇らしげに感じているようでした。
また、この変身にはなんだか中毒性があり、次の変身も楽しみになるのが不思議なところ。
「今度はどんな風になるんだろう・・・?」
と、ドキドキワクワクで、画面に惹きつけられてしまいます。
そして、変身するたび、
「なんじゃこりゃー!」と、盛り上がる。
完全に子どもたちの心は、鷲掴みにされてしまうのです。
その楽しみを盛り上げてくれるのが、変身の呪文です。
「ばけちゃうぞ。ばけちゃうぞ。おばけがおばけにばけちゃうぞ」
という、リズム感と、語感のよい呪文。
この呪文を聞くと、ワクワクドキドキ。
次にどんな姿になるのかと期待が膨らみます。
また、一緒に言いたくなってしまうのも楽しいところ。
一緒に言えば、今度は自分が変身するオバケになった気分です。
さて、そんな物語のオチは、まるで落語を見ているようなオチでした。
最初と言っていることが真逆になっているオバケたち。
よっぽど肝試しが怖かったのでしょう。
調子のいいことを言うオバケたちに、
「まったく・・・」
と、ため息をついて終わります。
これがなんとも座りがいいのです。
オバケがオバケに化けるという、まさかの展開が面白い。
と、思っていたら、変身したオバケの姿がさらに面白い、大盛り上がりな絵本です。
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