作:小沢正 絵:長新太 出版:世界文化社
二つの人気のパン屋さん。
一体、どっちの方が美味しいのでしょうか?
互いの店の主人が、こっそり相手の店のパンを食べてみると・・・。
あらすじ
街の外れに、キツネのパン屋がありました。
世界一美味しいパンを作ってみたいというのが、キツネの夢でした。
ある日、パン屋へお星さまがやってきて、パンを一つ買いました。
星はパンを食べ終わると、「ネコのパン屋には敵わないね」と言いました。
それを聞いて心配になったキツネは、紳士に化けると、ネコのパン屋へパンを買いに行きました。
キツネはパンを買い食べると言いました。
「キツネのパン屋には敵わないね」と。
ところが、キツネは家に帰ってくると泣き出しました。
本当はネコのパンの方が美味しいと感じたのです。
キツネはもうパン屋をやめようかと思いました。
その時、ネコの紳士がキツネのパン屋にやってきました。
パンを買って食べ終わると、ネコの紳士が言いました。
「ネコのパン屋には敵わないね」と。
しかし、ネコの紳士も家に帰ると泣き出しました。
このネコの紳士は、実はネコのパン屋のネコで、キツネのパンの方が美味しいと思ったからです。
泣き続けるネコを見て、パンたちはすっかり困りました。
そこで、病院に電話をして、医者を呼ぶことにしました。
すぐにクマのお医者さんが来てくれて、診察すると、「くよくよ病」と、「めそめそ病」が混ざったものだとわかりました。
入院すればすぐに治るというので、ネコのパン屋は入院することになりました。
ところが、病院に行ってみると、意外な人が待っていました。
その人とは一体・・・。
『きつねのぱんとねこのぱん』の素敵なところ
- 読者だけが知っているすれ違い
- すれ違いが解決するスッキリ感
- 想像が膨らむ星の意図
この絵本の面白いところは、キツネとネコのすれ違いです。
お互いに、本当は相手のパンの方が美味しいと思っているというすれ違い。
でも、本当の気持ちを読者だけが知っているというこの状況。
泣く必要なんてないことを知りつつも、どうしようもないやきもき感。
「本当は美味しいって思われてるのに・・・」
と、感じていても、伝える手段はありません。
この感覚が、この絵本の一番の魅力だと思います。
そして、やきもきした分だけ、すれ違いが解決した時のスッキリ感もひとしおです。
気持ちを伝えあうことで、誤解がほどけていくスッキリ感。
きちんと直接、気持ちを伝えることの大切さも、改めて感じます。
そこからの最後の結末は、心から「よかった」と思えるものになっています。
さて、この事件のきっかけは星の一言でした。
この星は最後の場面にも出てきて、2人のことを見守っています。
この星がどうしてこんなことをしたのか、想像が膨らむのも素敵なところです。
「もしかしたら、夢を叶えて上げるためかもしれない」
「もしかしたら、もっと美味しいパンを食べたかったのかな」
「友だちにしたかったんじゃない」
「もしかしたら・・・」と、色々なことが想像できるのです。
原因となった星の意図。
それを想像することによって、物語の見方が変わるのも、この絵本の面白いところです。
キツネとネコのすれ違いにヤキモキするのがとっても楽しい。
解決のスッキリ感とともに、パンを買いに行きたくなってしまう絵本です。
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