きつねのぱんとねこのぱん(5歳~)

絵本

作:小沢正 絵:長新太 出版:世界文化社

二つの人気のパン屋さん。

一体、どっちの方が美味しいのでしょうか?

互いの店の主人が、こっそり相手の店のパンを食べてみると・・・。

あらすじ

街の外れに、キツネのパン屋がありました。

世界一美味しいパンを作ってみたいというのが、キツネの夢でした。

ある日、パン屋へお星さまがやってきて、パンを一つ買いました。

星はパンを食べ終わると、「ネコのパン屋には敵わないね」と言いました。

それを聞いて心配になったキツネは、紳士に化けると、ネコのパン屋へパンを買いに行きました。

キツネはパンを買い食べると言いました。

「キツネのパン屋には敵わないね」と。

ところが、キツネは家に帰ってくると泣き出しました。

本当はネコのパンの方が美味しいと感じたのです。

キツネはもうパン屋をやめようかと思いました。

その時、ネコの紳士がキツネのパン屋にやってきました。

パンを買って食べ終わると、ネコの紳士が言いました。

「ネコのパン屋には敵わないね」と。

しかし、ネコの紳士も家に帰ると泣き出しました。

このネコの紳士は、実はネコのパン屋のネコで、キツネのパンの方が美味しいと思ったからです。

泣き続けるネコを見て、パンたちはすっかり困りました。

そこで、病院に電話をして、医者を呼ぶことにしました。

すぐにクマのお医者さんが来てくれて、診察すると、「くよくよ病」と、「めそめそ病」が混ざったものだとわかりました。

入院すればすぐに治るというので、ネコのパン屋は入院することになりました。

ところが、病院に行ってみると、意外な人が待っていました。

その人とは一体・・・。

『きつねのぱんとねこのぱん』の素敵なところ

  • 読者だけが知っているすれ違い
  • すれ違いが解決するスッキリ感
  • 想像が膨らむ星の意図

この絵本の面白いところは、キツネとネコのすれ違いです。

お互いに、本当は相手のパンの方が美味しいと思っているというすれ違い。

でも、本当の気持ちを読者だけが知っているというこの状況。

泣く必要なんてないことを知りつつも、どうしようもないやきもき感。

「本当は美味しいって思われてるのに・・・」

と、感じていても、伝える手段はありません。

この感覚が、この絵本の一番の魅力だと思います。

そして、やきもきした分だけ、すれ違いが解決した時のスッキリ感もひとしおです。

気持ちを伝えあうことで、誤解がほどけていくスッキリ感。

きちんと直接、気持ちを伝えることの大切さも、改めて感じます。

そこからの最後の結末は、心から「よかった」と思えるものになっています。

さて、この事件のきっかけは星の一言でした。

この星は最後の場面にも出てきて、2人のことを見守っています。

この星がどうしてこんなことをしたのか、想像が膨らむのも素敵なところです。

「もしかしたら、夢を叶えて上げるためかもしれない」

「もしかしたら、もっと美味しいパンを食べたかったのかな」

「友だちにしたかったんじゃない」

「もしかしたら・・・」と、色々なことが想像できるのです。

原因となった星の意図。

それを想像することによって、物語の見方が変わるのも、この絵本の面白いところです。

キツネとネコのすれ違いにヤキモキするのがとっても楽しい。

解決のスッキリ感とともに、パンを買いに行きたくなってしまう絵本です。

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