文:那須田淳 絵:エリック・バトゥー 出版:講談社
水曜日の妖精すいようびくん。
彼がどんな仕事をしているか知っていますか?
知らないのなら、すいようびくんの一日をのぞいてみましょう。
あらすじ
ぼくは、すいようびくんと友だちになった。
ちょうど一週間の真ん中の日。
夜が明けようとする頃、すいようびくんはやってくる。
すいようびくんは、海岸の岩穴の中から青い月の光をすくったり、
野原の草にたまった緑のしずくや、花の色とりどりの夜露を集めたり、
森の木々の間に漂う、紫の霧を袋に詰めたりする。
登る前の朝日の赤も。
集めた色を家に持って帰ると、全部お鍋に入れ、夢や子どもたちの笑い声、幸せな気持ちも加えてグツグツ煮る。
それを棒みたく長く丸めて冷ましたら、包丁で小さく切って飴のようにしたら、げんきだまの出来上がり。
それを、一週間の他の妖精みんなで、世界中に配って歩く。
そして、雨が降るとげんきだまから七色の光が生まれ、空に虹が出来るんだって。
『すいようびくんのげんきだま』の素敵なところ
- とてもロマンチックな虹の作り方
- 優しくも美しい文章と絵
- ぼくとすいようびくんのほんわかしたやり取り
この絵本でとても印象的なのは、虹の作り方です。
自然から色を集めて、夢や、幸せや、笑い声を一緒に混ぜ合わせて作るげんきだま。
そこから虹の色が出来ているというのです。
とてもロマンチックで、夢のある作り方です。
でも、虹をみた時の感動や、心が洗われるような感覚、人を元気にしてくれる力を思い出すと、この作り方になんだかもの凄く説得力があるのです。
また、虹をみた時に、あの色が、夢や幸せ笑いが詰ったげんきだまから出来ていると思うと、自分もより幸せな気持ちになってしまうのです。
そんな美しい虹を、さらに素敵なものにしてくれている要素が、文章と絵にあります。
色を集める時の優しくも美しい文学的な文章。
「海岸の岩の穴の中をのぞいて、青い月の光をすくったり」
「花の黄色や橙や赤色の、夜露を集めたり」
「木々の間に漂う紫の霧を、袋に詰めたり」
聞いているだけで、色がより輝きを増し、より鮮やかに感じられてきます。
どこか厳かな感じもあり、なにかすごいことをしようとしていることも感じられます。
そして、その文章の美しい情景を、そのまま浮かび上がらせたような色鮮やかな絵。
この二つが組み合わさって、より美しくロマンチックになっているのです。
さて、そんなすごい仕事を終えたすいようびくん。
仕事終わりに、友だちのぼくと、ゆったりした時間を過ごします。
それまでの幻想的で厳かな雰囲気とはうって変わり、とてもほんわかしたやり取りが交わされます。
このやり取りを見ていると、すいようびくんがとても身近な存在に感じられ、自分も友だちになりたいなと思ってしまいます。
特に穏やかな顔で「ふふふ」と笑う姿が印象的。
前半と後半の雰囲気のギャップと、その中で常に流れる優しい雰囲気が、この絵本のとても素敵なところだと思います。
すいようびくんの仕事を見ることで、なぜ虹があんなにも美しいかがわかる。
綺麗で不思議でとても優しい水曜日を、過ごすことが出来る絵本です。
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