絵・文:井上洋介 出版:フレーベル館
もし、空にアナボコが空いたら・・・。
もし、スプーンに穴が空いてたら・・・。
そんな「もし・・・」が楽しい、アナボコだらけの絵本です。
あらすじ
空のてっぺんにアナボコが空くと、そこからどしゃぶりの雨が降ってきた。
ハチの巣山はアナボコだらけで、大きなハチが住んでいる。
古靴が大好きな巨人は、アナボコが空いた靴に足を通して何足も履く。
アナボコ空いてるトンカチは、釘がちっともへこまない。
アナボコ空いてるスプーンでは、スープが飲めない。
満月にアナボコが空いていたら、ドーナツみたいな変な月。
まだまだ出てくるアナボコだらけの、アナボコ絵本。
電車にも、橋にも、電柱にも・・・。
『アナボコえほん』の素敵なところ
- 予想外の所にアナボコが空く驚きと面白さ
- 語呂のいいリズミカルな文章
- 突然始まる短い漫画
この絵本の魅力はなんと言っても、色んな所に空くアナボコ。
スプーンや、トンカチどの小さなものから、月や空などの予想外な規模のものまで。
本当に何でもアナボコが空いてしまいます。
空いた結果も、スプーンでスープが飲めない「そりゃそうだよ」と思うことから、空のアナボコからは雨が降ってくるという「なるほど!」と唸ってしまう予想外なものまで様々。
ページをめくるたび、ワクワクしてしまいます。
子どもたちも、
「そんなところに穴空いちゃうの!?」
「これじゃ意味ないじゃん!」
「これは避けたら大丈夫じゃない?」
など、楽しみつつ、驚きつつ、アナボコが空いたのを想像しながら見ているようでした。
さらに、語呂がよい文章が加わり、よりテンポよく、楽しくアナボコが空いていくのも素敵なところ。
「空のてっぺん アナボコ空くと 土砂降りの雨 降ってくる」
「古靴は アナボコ空くと 捨てちゃうが わしは捨てるの 大嫌い」
など、語呂とリズム感のいい一文で、一つのアナボコが空いていくので、とてもテンポよく進んでいくのです。
かなりたくさんのアナボコが空いていくのですが、全く飽きさせず、あっという間に終わってしまったように感じるほどでした。
さて、この絵本の中には唐突に、コマ割りがされ、漫画になるページが出てきます。
これが物凄くいいアクセントになっていて面白いのです。
しっかりオチもついていて、急に違う絵本に迷い込んでしまったような、不思議な感覚。
でも、しっかりアナボコ絵本という、なんだか面白い体験をさせてくれます。
これがたまに挟まってくるので、より飽きることなく最後まで楽しめるのです。
予想もつかない所に、次々と開くアナボコ。
そんなアナボコを通して、常識を超えた想像を心行くまで楽しめる、ナンセンス絵本です。
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