写真:山本直洋 文:ちかぞう 出版:小学館
「空を飛んでみたいな」
そんな気持ちを、一度は持ったことがあるのではないでしょうか?
この絵本を開けば、心ひとつで空に飛び出すことが出来るのです。
あらすじ
ずっと空を飛びたくて、ついに翼を手に入れた。
憧れの大空へ、出発だ。
空に上がると、空気がぐんぐん冷たくなる。
町が小さくなり、山も空から見下ろしている。
雲の切れ間に滑り込む。
雲の中は輝く世界。
そして、雲を潜り抜けたら、真っ青な空と、輝く太陽。
太陽がとても近い。
森の上にやってくると、緑のにおい。
眼下に飛ぶトンビは、どの風に乗ればいいのか教えてくれる先生だ。
見渡す限りの大地を見ていると、地球の一部になれたみたい。
風に乗って、地球の欠片を集めてみた。
山の上にあるまん丸な湖。
くねくねしたヘビみたいな道。
雷みたいなジグザグ模様。
空から見ると、面白い形がたくさん見つかる。
まだまだ、空の旅は続いていく。
今度はどんな光景が見られるのだろう。
『そらをとびたい』の素敵なところ
- 見開きで広がる大きな美しい空と大地の写真
- 本当に空を飛んでいる感覚を味わえる文章
- 空からしか見えない色んな不思議
この絵本の一番の魅力は、壮大で荘厳な空と大地です。
見開き1ページに広がる、空と大地の写真。
ページをめくるたび、移り変わっていく景色。
それは本当に空を飛んでいるようです。
見たこともない、息を呑むような美しさは圧巻。
雲の上から見る、視界全てに広がる雲海。
邪魔するものがない中で輝く太陽。
上から見下ろす富士山。
など、どれもが地上からは見られない、幻想的とすら言える光景ばかりです。
でも、この絵本のすごいところは、壮大な写真だけではありません。
本当に飛んでいる様な感覚を味わえる文章も、とても素敵なところなのです。
「いち、にの、さん!」で、空に飛び出します。
高度が上がるにつれ「頬に当たる空気が、ぐんぐん、ぐんっと冷たくなって」いきます。
雲の中にいると「ぼくを包む黄金色」の世界。
雲を潜り抜けると太陽が見え、「光の海を泳ぐよう」。
というように、飛んでいる「ぼく」の目線から、一人称視点で、空を飛んでいる時に感じることや、その時の気持ちが文章になっています。
なので、本当に自分がそこにいて、空の空気や風を感じ、一緒に飛んでいる感覚になるのです。
この文章と、目の前に広がる写真の相乗効果で、絵本を開くと空を飛ぶことが出来るのです。
さて、そんな壮大な景色を見せてくれるこの絵本ですが、空の不思議もたくさん見せてくれます。
雲の上がどうなっているか。
空から見下ろしたまん丸の虹。
雨を降らしながら近づいてくる雨雲。
など、地上にいたのでは見ることが出来ない、自然の不思議も見ることが出来るのです。
そして、この不思議を見ることで、より空への憧れが高まっていくのです。
目の前に広がる大きく美しい空と、本当に飛んでいるような感覚を味わえる文章。
これによって、気付けば空に魅了され、誘われてしまう魅惑の絵本です。
コメント