森のパンダ(5歳~)

絵本

文:唐亜明 絵:木下晋 出版:講談社

森で暮らす野生のパンダ。

その姿は、動物園で見るのとは全然違います。

生き生きと、力に満ちたパンダの姿を、ぜひご覧ください。

あらすじ

竹が生い茂る、山間の森。

そこに住む一頭のパンダが、竹を折り、ベッドを作っています。

もうすぐ生まれてくる、赤ちゃんのためのベッドです。

赤ちゃんが生まれ、このパンダはお母さんになりました。

赤ちゃんはピンク色で、白い産毛が生えています。

お母さんは赤ちゃんを胸に抱き寄せたり、お尻を舐めて、うんちが出やすいようにしてあげたりと、愛情をもって育てます。

赤ちゃんは大きくなるにつれ、手と足、肩と耳が黒くなっていきます。

そして、お母さんと出かけられるくらい大きくなりました。

お母さんと遊ぶのは何より楽しく、何度もでんぐり返しをしたりします。

でも、木登りを教える時は、お母さんは厳しくなります。

木の上が、パンダにとって一番安全なところだからです。

パンダは竹を食べますが、たまにネズミなどの違うものも食べます。

赤ちゃんパンダは1歳になりました。

そんなある日、お母さんがいないことに気付きました。

どんなに探しても見つかりません。

パンダは子どもが1歳を過ぎると、独り立ちさせるため、お母さんは離れていくのです。

赤ちゃんパンダは、毎日お母さんを探していました。

ある日、嗅いだことのないいい匂いにつられ、人間の家にやってきました。

周りには誰もいないので、パンダは家の中に入っていきました。

パンダは壁にかかった干し肉を咥えます。

その頃、台所ではおばあさんがご飯を作っていました。

おばあさんは、パンダに気付いていないようです。

おじいさんがパンダに気付き叫ぶと、パンダは慌てて逃げていきました。

外へ出ると、犬に吠え立てられました。

村の子どもたちが追い払ってくれ、パンダは森へと駆け込むことが出来ました。

一人になったパンダは、無事に生き抜くことが出来るのでしょうか。

『森のパンダ』の素敵なところ

  • 野生のパンダの暮らしがわかる
  • 野生だからこその表情やしなやかな体
  • とても緻密に描かれた鉛筆画

この絵本では、パンダの子育てを中心に、野生のパンダの暮らしぶりが詳しく描かれています。

子どもとの関わり、食事、遊び、人間との関係性。

そこに描かれるパンダは、動物園で見るのとは違い、生きる力に満ち溢れています。

木登りなどの遊びは、安全地帯を見つけるため。

食べ物のために民家に入る。

など、どれもが生きることに直結しているのです。

そんなパンダの姿は、とても野性味に溢れていて、これも動物園で見るパンダとは全然違います。

目つきは鋭く、体は引き締まっています。

牙をむき出し、竹をかみ砕く姿はとても力強いもの。

でも、子どもへの眼差しは温かく、優しい目をしています。

野生だからこその、厳しさと、優しさを感じさせてくれるのです。

子どもたちも、

「パンダの顔怖いね」

「これはかわいい!」

と、野生の顔と、愛嬌のある顔、両方を感じ取っていたみたいです。

そして、これら全てが、緻密な鉛筆画で描かれているのもすごいところ。

パンダの毛並みの一本一本、人間の細かな顔の皺まで、丁寧に描かれています。

この緻密で、写真と見間違うほどのリアルさが、本当に絵本の中で生きて、動いているように感じさせ、よりパンダとの距離を近いものにしてくれているのです。

特に、パンダの表情の描きわけがすごく。

目を見ているだけで、お母さんパンダや、赤ちゃんパンダがどんな気持ちなのかが読み取れます。

厳しさ、怖さ、愛情、かわいさ。

色々な野生のパンダの魅力が、伝わってくるのは、この絵があるからこそなのだと思います。

動物園とは違う、森に住むパンダの暮らしを垣間見ることが出来る。

野生に生きるパンダの、力強さや生命力を感じさせてくれる絵本です。

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