文:唐亜明 絵:木下晋 出版:講談社
森で暮らす野生のパンダ。
その姿は、動物園で見るのとは全然違います。
生き生きと、力に満ちたパンダの姿を、ぜひご覧ください。
あらすじ
竹が生い茂る、山間の森。
そこに住む一頭のパンダが、竹を折り、ベッドを作っています。
もうすぐ生まれてくる、赤ちゃんのためのベッドです。
赤ちゃんが生まれ、このパンダはお母さんになりました。
赤ちゃんはピンク色で、白い産毛が生えています。
お母さんは赤ちゃんを胸に抱き寄せたり、お尻を舐めて、うんちが出やすいようにしてあげたりと、愛情をもって育てます。
赤ちゃんは大きくなるにつれ、手と足、肩と耳が黒くなっていきます。
そして、お母さんと出かけられるくらい大きくなりました。
お母さんと遊ぶのは何より楽しく、何度もでんぐり返しをしたりします。
でも、木登りを教える時は、お母さんは厳しくなります。
木の上が、パンダにとって一番安全なところだからです。
パンダは竹を食べますが、たまにネズミなどの違うものも食べます。
赤ちゃんパンダは1歳になりました。
そんなある日、お母さんがいないことに気付きました。
どんなに探しても見つかりません。
パンダは子どもが1歳を過ぎると、独り立ちさせるため、お母さんは離れていくのです。
赤ちゃんパンダは、毎日お母さんを探していました。
ある日、嗅いだことのないいい匂いにつられ、人間の家にやってきました。
周りには誰もいないので、パンダは家の中に入っていきました。
パンダは壁にかかった干し肉を咥えます。
その頃、台所ではおばあさんがご飯を作っていました。
おばあさんは、パンダに気付いていないようです。
おじいさんがパンダに気付き叫ぶと、パンダは慌てて逃げていきました。
外へ出ると、犬に吠え立てられました。
村の子どもたちが追い払ってくれ、パンダは森へと駆け込むことが出来ました。
一人になったパンダは、無事に生き抜くことが出来るのでしょうか。
『森のパンダ』の素敵なところ
- 野生のパンダの暮らしがわかる
- 野生だからこその表情やしなやかな体
- とても緻密に描かれた鉛筆画
この絵本では、パンダの子育てを中心に、野生のパンダの暮らしぶりが詳しく描かれています。
子どもとの関わり、食事、遊び、人間との関係性。
そこに描かれるパンダは、動物園で見るのとは違い、生きる力に満ち溢れています。
木登りなどの遊びは、安全地帯を見つけるため。
食べ物のために民家に入る。
など、どれもが生きることに直結しているのです。
そんなパンダの姿は、とても野性味に溢れていて、これも動物園で見るパンダとは全然違います。
目つきは鋭く、体は引き締まっています。
牙をむき出し、竹をかみ砕く姿はとても力強いもの。
でも、子どもへの眼差しは温かく、優しい目をしています。
野生だからこその、厳しさと、優しさを感じさせてくれるのです。
子どもたちも、
「パンダの顔怖いね」
「これはかわいい!」
と、野生の顔と、愛嬌のある顔、両方を感じ取っていたみたいです。
そして、これら全てが、緻密な鉛筆画で描かれているのもすごいところ。
パンダの毛並みの一本一本、人間の細かな顔の皺まで、丁寧に描かれています。
この緻密で、写真と見間違うほどのリアルさが、本当に絵本の中で生きて、動いているように感じさせ、よりパンダとの距離を近いものにしてくれているのです。
特に、パンダの表情の描きわけがすごく。
目を見ているだけで、お母さんパンダや、赤ちゃんパンダがどんな気持ちなのかが読み取れます。
厳しさ、怖さ、愛情、かわいさ。
色々な野生のパンダの魅力が、伝わってくるのは、この絵があるからこそなのだと思います。
動物園とは違う、森に住むパンダの暮らしを垣間見ることが出来る。
野生に生きるパンダの、力強さや生命力を感じさせてくれる絵本です。
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