作:塩野米松 絵:村上康成 出版:ひかりのくに株式会社
なぜか暑い街の中を、歩くペンギン。
寒い国のペンギンには、こたえる暑さ。
そんなペンギンが、ある意外な所に憩いの場所を見つけました。
あらすじ
ペンギンが、夏の街にやってきました。
トンボに「暑いね」と話しかけます。
歩いていくと、見たことのない虫が木にとまって鳴いています。
トンボに聞くと、セミだと教えてくれました。
ニワトリに会い、「暑くない?」と聞くと、ニワトリも「暑いね。」。
その時、急に水がかかりびっくり。
洗車をしていた人の、ホースからでした。
塀の影で休んだり、人の影に入りながら歩いていくと、着いたのはスーパーマーケット。
そこの鮮魚コーナーに、涼しそうなショーケースを見つけました。
ペンギンが入ると、いい気持ち。
そのまま眠ってしまい、ペンギンは海の夢を見始めました。
一方その頃、鮮魚コーナーに来た男の子が、眠っているペンギンを見つけ・・・。
『なつペンギン』の素敵なところ
- 夏とペンギンのギャップ
- 暑さを感じさせる言葉少なな会話
- 涼しく気持ちよさそうな夢
この絵本の面白いところは、夏の暑さと、寒い国のペンギンという組み合わせ。
普通は氷や海とセットで描かれるペンギンが、暑い街をペタペタ歩く姿が面白い。
その姿が、本当に暑そうで、見ているこっちも汗をかいてしまいます。
ペンギンの表情豊かなのも素敵なところ。
涼しい表情などは、とても気持ちよさそうで、こちらにまで伝わってきます。
暑さと涼しさが交互に来ることで、夏ならではの「あつ~い」と「すずし~」を、思い出させてくれるのです。
また、ペンギンの仕草だけではなく、言葉からも暑さが伝わってきます。
本当に暑い時に出る、しみじみとした言葉。
「あついね」
これ以上に暑さを感じる言葉はないでしょう。
自然と言葉数も少なくなり、
「暑くない?」
「暑いね」
など、一言会話も多くなります。
でも、それが夏のうだるような暑さを、こちらにも感じさせてくれるのです。
言葉と言葉の間、ページとページの間に、自然とセミの鳴き声が聞こえてくる、あの夏の感覚。
それが、ペンギンの仕草と言葉から、リアルに感じられるのが、この絵本のとても素敵なところです。
そんな暑い中、ペンギンは憩いの場を見つけます。
そこは鮮魚コーナーのショーケース。
他の魚たちもいるし、とっても涼しい天国のような場所。
そこでペンギンは夢を見ます。
海の中で泳ぐ夢。
クジラと泳いだり、自由に飛ぶように泳ぎます。
これが本当に涼しくて、気持ちよさそうなのです。
これまで、暑い場面が続いていたことで、夢の海の解放感は相当なもの。
ペンギンと一緒に、見ているこっちも心が解放されるよう。
「涼しそ~!」
「私も海行きたい!!」
「絶対気持ちいい!」
と、思わず声が上がります。
この暑さと涼しさのギャップが、とっても楽しいのです。
夏にやってきたペンギンの姿を通して、うだるような夏の暑さ、天国のような涼しさを味わえる。
日本の夏を、ぎゅっと詰め込んだような暑く、涼しく、やっぱり暑い絵本です。
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