なつペンギン(4歳~)

絵本

作:塩野米松 絵:村上康成 出版:ひかりのくに株式会社

なぜか暑い街の中を、歩くペンギン。

寒い国のペンギンには、こたえる暑さ。

そんなペンギンが、ある意外な所に憩いの場所を見つけました。

あらすじ

ペンギンが、夏の街にやってきました。

トンボに「暑いね」と話しかけます。

歩いていくと、見たことのない虫が木にとまって鳴いています。

トンボに聞くと、セミだと教えてくれました。

ニワトリに会い、「暑くない?」と聞くと、ニワトリも「暑いね。」。

その時、急に水がかかりびっくり。

洗車をしていた人の、ホースからでした。

塀の影で休んだり、人の影に入りながら歩いていくと、着いたのはスーパーマーケット。

そこの鮮魚コーナーに、涼しそうなショーケースを見つけました。

ペンギンが入ると、いい気持ち。

そのまま眠ってしまい、ペンギンは海の夢を見始めました。

一方その頃、鮮魚コーナーに来た男の子が、眠っているペンギンを見つけ・・・。

『なつペンギン』の素敵なところ

  • 夏とペンギンのギャップ
  • 暑さを感じさせる言葉少なな会話
  • 涼しく気持ちよさそうな夢

この絵本の面白いところは、夏の暑さと、寒い国のペンギンという組み合わせ。

普通は氷や海とセットで描かれるペンギンが、暑い街をペタペタ歩く姿が面白い。

その姿が、本当に暑そうで、見ているこっちも汗をかいてしまいます。

ペンギンの表情豊かなのも素敵なところ。

涼しい表情などは、とても気持ちよさそうで、こちらにまで伝わってきます。

暑さと涼しさが交互に来ることで、夏ならではの「あつ~い」と「すずし~」を、思い出させてくれるのです。

また、ペンギンの仕草だけではなく、言葉からも暑さが伝わってきます。

本当に暑い時に出る、しみじみとした言葉。

「あついね」

これ以上に暑さを感じる言葉はないでしょう。

自然と言葉数も少なくなり、

「暑くない?」

「暑いね」

など、一言会話も多くなります。

でも、それが夏のうだるような暑さを、こちらにも感じさせてくれるのです。

言葉と言葉の間、ページとページの間に、自然とセミの鳴き声が聞こえてくる、あの夏の感覚。

それが、ペンギンの仕草と言葉から、リアルに感じられるのが、この絵本のとても素敵なところです。

そんな暑い中、ペンギンは憩いの場を見つけます。

そこは鮮魚コーナーのショーケース。

他の魚たちもいるし、とっても涼しい天国のような場所。

そこでペンギンは夢を見ます。

海の中で泳ぐ夢。

クジラと泳いだり、自由に飛ぶように泳ぎます。

これが本当に涼しくて、気持ちよさそうなのです。

これまで、暑い場面が続いていたことで、夢の海の解放感は相当なもの。

ペンギンと一緒に、見ているこっちも心が解放されるよう。

「涼しそ~!」

「私も海行きたい!!」

「絶対気持ちいい!」

と、思わず声が上がります。

この暑さと涼しさのギャップが、とっても楽しいのです。

夏にやってきたペンギンの姿を通して、うだるような夏の暑さ、天国のような涼しさを味わえる。

日本の夏を、ぎゅっと詰め込んだような暑く、涼しく、やっぱり暑い絵本です。

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