作:中野真典 出版:イースト・プレス
そこは不思議なトンネル。
心細い時に、楽しく明るい気持ちにさせてくれる・・・。
面白いお話のようなトンネルです。
あらすじ
雨の降る日、高架下の真っ暗なトンネルの中。
カッパを着た男の子が震え、うずくまっていた。
走っている電車の音が聞こえる。
と、その音に交じって、不思議な音が聞こえてきた。
目を開けると、真っ暗なトンネルにラッパの音。
ラッパを吹いていたのはピエロだった。
そして、唐突にトンネルの奥でサーカスが始まった。
踊り子たちが、皿を回しながら舞い踊る。
と思ったら、踊り子が消え、お皿がちょうちょになり、飛び出した。
そこで、ピエロがラッパを吹くと、ラッパの音が「ボ・ボ・ボ・・」と変わり、「ボーッ!」と船の汽笛になった。
目の前に大きな船も現れた。
船が遠くへ去っていく。
目の前には波が打ち寄せる青い海。
砂浜に転がった人形を、ペガサスが背中に乗せて、空の向こうへ飛んでいく。
すると、目の前が真っ暗になり、ぎょろりとした目の恐ろしい顔が・・・。
一体どうなってしまうのか!?
『おはなしトンネル』の素敵なところ
- 不気味なトンネルを劇場に変えてしまう発想力
- ノンストップで次々と変わっていく場面
- 最後に素敵なサプライズ
雨の日の、真っ暗なトンネル。
そこはなんだか不気味で、恐怖を感じるのも無理はありません。
でも、この絵本では、それを劇場の暗闇に、トンネルの出口を舞台に見立ててしまいます。
そうなると、そこはもうエンターテイメント。
楽しい世界に早変わり。
サーカスが始まり、海が現れ、さらには空へ。
怖さなんて忘れて、目の前で繰り広げられるお話に、釘付けにされてしまいます。
これは、絵本の中の男の子だけではありません。
絵本を見ている子どもたちも一緒です。
ほとんどの場面が、男の子の一人称で描かれているので、本当に自分もトンネルにいる感覚になるのです。
ノンストップで、次々と起こる出来事。
切り替わっていく場面。
まるでジェットコースターにでも、乗っているようです。
その没入感は相当なもの。
「船になった!」
「お空飛んだよ!」
と、サーカスを見に来ている子どものような反応です。
そんなおはなしトンネルの最後には、素敵なサプライズが用意されていました。
ピエロによる、粋なサプライズです。
ここでは、見ている子もピエロの片棒を担ぎます。
そのサプライズで残ったものが、色々なことを想像させ、このおはなしをより深みのあるものにしてくれているのも、素敵なところです。
不思議なトンネルの、不思議なサーカスを見ているうちに、自分もトンネルの中に入り込んでしまう。
ノンストップで駆け抜けていく、ジェットコースターのような絵本です。
コメント