ともだちってだれのこと?(4歳~)

絵本

作:岩瀬成子 絵:中沢美帆 出版:佼成出版社

仲のいい友達が他の人と遊ぶ。

そんな時にチクリと刺さる心のトゲ。

想像を膨らませるほど、そのトゲは太くなってしまいます。

あらすじ

ネズミがテンの家に遊びに行きました。

すると、ドアに張り紙が。

「友だちのうちに行くので、家を留守にします」

と、書いてあります。

ネズミはがっかりしましたが、自分の家に来ているのかもしれないと思い直し、家に帰りました。

でも、テンは来ていませんでした。

しばらく待ちましたが、テンはやってきません。

「友だちって僕のことじゃないかもしれない」

ネズミはそう思うと、胸がザワザワし、寂しい気持ちになりました。

もしかしたら、友だちってモグラのことかもしれないと思いました。

モグラはネズミよりも、穴掘りが上手いから。

タヌキのことかもしれないとも思いました。

どこに抜け道があるか、ネズミよりずっと知っているから。

それとも、モモンガ?ウサギ?

考えていると、ネズミはドキンとしました。

もしかしたら、ネズミだけのけ者にして、みんなで遊んでいるかもしれないと、考えてしまったからです。

ネズミは大声で泣きました。

しばらくして、泣くのをやめると、ネズミは立ち上がり、モグラの家に行きました。

モグラに聞くと、テンは来ていないようです。

ネズミは他の動物たちの家も回りましたが、どこにもテンは来ていませんでした。

そんな中、ウサギが「テンなら森の方へ行くのを見た」と教えてくれました。

そこで、ネズミは森にも行ってみることに。

ネズミが駆け出したその時・・・。

『ともだちってだれのこと?』の素敵なところ

  • 「友だち」が自分じゃないと思った時の胸の痛み
  • 確かめてみる大切さ
  • 心が通じ合う嬉しさ

仲のいい友だちが、「友だち」と言った時、それが自分じゃないことの悲しさ。

胸がざわつき、チクチクし、どんどん悪い想像をしてしまう。

そんな複雑な心模様を、見事に描いているのがこの絵本のすごいところです。

ネズミの姿を通して、痛いほどにその気持ちが伝わってきます。

他の誰かと遊んでいることを想像していると、どんどん想像が膨らみ、悪い方へと転がっていきます。

最後には「自分が仲間外れにされているかもしれない」という所まで。

でも、きっと思い当たる節が、誰しもあるのではないでしょうか。

勝手に想像して、疑心暗鬼になり、気まずくなってしまう。

まさに負のループです。

しかし、ネズミはこの負のループを断ち切りました。

たくさん泣いた後に、気持ちを切り替え、実際に確かめてみることにしたのです。

これがネズミとこの絵本のとても素敵なところ。

考えていても解決しません。

実際に家に行ってみると、テンは来ていなくて、それぞれにやりたいことをしています。

一軒回るごとに、疑いが解け、心がほぐれていく感じ。

仲間外れにされていなかったこと、「友だち」が他の誰かじゃないこと。

これは確かめるために、行動をしたからわかったことです。

そうしなかったら、疑ったままだったでしょう。

ネズミの姿を通して、疑わず、確かめてみることの大切さを伝えてくれるのです。

さて、そうなってくると、テンがどこに行ったのかが疑問です。

これがわかるのは最後の場面。

テンがいなかった理由、なにを考えていたのか聞いて、ネズミもみんなもほっこりします。

ここまで、たくさん疑い、心配し、不安になってたからこそ、なおさら嬉しいのでしょう。

子どもたちも心から、

「会えてよかった!」

「友だちって、ネズミさんのことだったんだね!」

「ちゃんと、ネズミの家って書けばよかったのに」

と、二人が友だちであることを、喜んでいる様でした。

ネズミの姿を通して、友だちだからこその不安や、胸の痛みに共感させられる。

同時に、事実を確かめたり、行動することの大切さも伝わってくる絵本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました