作:かこさとし 出版:偕成社
『からすのそばやさん』では、まだ子どもだったオモチちゃん。
いつの間にか、若者になっていました。
そんなオモチくんが、興味を持ったのが蕎麦だったのです。
あらすじ
カラスの町に、パン屋さんがありました。
そこには四羽の子どもがいて、そのうちの一羽オモチちゃんのお話です。
オモチちゃんもすっかり大きくなり、立派な若者オモチくんになりました。
オモチくんはてんぷら屋さんで、揚げ物の作り方を教えてもらった後、次は何をしようか考えていました。
ある日、散歩をしていると、白い花が咲いた畑が続いています。
畑にいたおじさんに尋ねると、蕎麦の花だと教えてくれました。
おじさんの名前はハッサクと言い、「しばらくしたら、花が実になるから見においで」と誘ってくれました。
そして、実になったころ、オモチちゃんがハッサクおじさんを訪ねると、そこにはハッサクおじさんの家族がいました。
ツユおばさんと、娘のイソちゃんでした。
ハッサクおじさんは、実を日に干して、殻を取り、粉にして蕎麦を作るのだと教えてくれました。
またしばらくして、ハッサクおじさんのところへいくと、ちょうど蕎麦の粉を挽き終わったところでした。
そこで、オモチくんも一緒に蕎麦作りをすることに。
一から教えてもらいながら蕎麦を作ります。
そして、ツユおばさんが、出来上がったそばで、もりそばを作ってくれました。
蕎麦を食べながら、「こんなおいしい蕎麦、お店を作って売ればいいのにね」とオモチくんが言うと、「そうね、オモチくんがやりなさいよ」とイソちゃん。
そこで、ハッサクおじさんの庭の隅に場所を借り、蕎麦屋さんを作ることになりました。
次の日には、ハッサクおじさんの家族総出で、オモチくんを手伝い、ついにお店は開店しました。
もりそばに、かけそば、とろろそば、てんぷらそば、ちからそば。
色々な蕎麦の注文が来ましたが、みんなで頑張ったので、無事に済みました。
次の日、今度は変わった蕎麦の注文が相次ぎました。
にゃんにゃんそば、おおかみそば、さんぞくそば、かいぞくそば、れんぞくそば。
さらにはうどんも食べたいという要望が。
そこで三日目にはうどんも出すことになりました。
素うどん、きつねうどん、煮込みうどん、あんかけうどん、てんぷらうどん・・・。
うどんもあると、蕎麦屋さんの評判が森中に広がったので、メニューの種類をさらに増やします。
豪傑うどん、ごちそううどん、みけねこうどん、うさぎそば・・・。
そこへさらにラーメンも食べたいと要望が出ました。
すると翌日。
塩ラーメン、醤油ラーメン、味噌ラーメン、もやしラーメン・・・。
蕎麦にうどんにラーメンまで出すように。
ラーメンも食べられるということで、お客さんはさらに増えていきました。
次の日にはさらにメニューが増えました。
冷やしラーメン、おかめラーメン、ひょっとこラーメン・・・。
このお店のメニューはどこまで増えていくのでしょうか。
蕎麦屋の行く末は一体。
『からすのそばやさん』の素敵なところ
- 蕎麦の作り方が一からわかる
- どんどん増えていく美味しくて楽しいメニュー
- オモチちゃんの行く末を見ることが出来る
この絵本では、蕎麦が出来るまでが、一から細かく描かれています。
花が咲き、実になって、粉にして、それをこねる。
これが全て時系列順に描かれ、読み終わるころには蕎麦に詳しくなっているのです。
特に、粉から先は、
1,「はじめは蕎麦の粉に少し小麦粉を混ぜて」
2,「その粉にお湯を少しずつ足しながら、こねていきます。」
3,「丸くまとまったら、力を入れて、何度も何度も、こねてこねてこねて、モチのように丸めます。」
といった具合に、イラスト付きで、さらに詳しく描かれるのです。
子どもたちも興味津々で、
「こうやって作ってるんだ」
「結構大変そう」
と、真剣に作り方を見ていました。
こうして出来た蕎麦で、蕎麦屋を始めることになったオモチくん。
最初はスタンダードなメニューでしたが、徐々に変わった注文が入り始めます。
にゃんにゃんそばに、おおかみそば、さんぞくそば・・・。
こうなってくるともう止まりません。
でも、驚くのはまだ早い。
まさかの蕎麦を飛び出して、うどんまで作り始めてしまいます。
ここでも出てくる、バリエーション豊富な蕎麦たち。
すごいのは全てちゃんと描かれていて、どんなものが入っているかがわかること。
美味しそうな蕎麦や、うどんを見ているだけでも楽しいですし、なんでその名前になったのか考えるのも面白い。
「ネコの顔になってるからにゃんにゃんそばなのかな?」
「山みたいな色だからさんぞくそばなのかも」
など、想像が膨らみます。
でも、まだ終わりません。
ついにはラーメンを出し始めます。
これには子どもたちもびっくり。
「ラーメンまで出しちゃうの!?」
「なんでも作れるじゃん!」
この止まらない勢いと、止まらないメニュー開発が楽しすぎるのです。
さて、そんな蕎麦屋さんの面白さとは別に、オモチちゃんの行く末を見ることが出来るのも素敵なところです。
『からすのぱんやさん』では、兄弟げんかをしたり、わんぱくな子どもだったオモチちゃん。
それが若者になり、蕎麦と出会い、店を開き働き始める。
そんな、立派に成長し、頑張っているオモチくんの姿を見られるだけでも嬉しいもの。
物語の最後にはオモチくんの決断も見ることが出来ます。
自分の羽で立派に飛んでいる姿を見るのは、まるで子どもの成長を見守っているようです。
オモチくんの蕎麦との出会いから、本格的な蕎麦の作り方を、楽しく知ることが出来る。
さらに、止まらないメニュー開発に、ワクワクと想像力も止まらなくなる絵本です。
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