なつねこ(5歳~)

絵本

文:かんのゆうこ 絵:北見葉胡 出版:講談社

夏の風物詩、風鈴。

その音の中に、風の歌が聞こえた人はいるでしょうか?

その歌が聞こえたのなら、なつねこに会えるかもしれません。

あらすじ

夏になると、女の子のなみこの家では、軒下に風鈴がかけられます。

なみこは風鈴の音が大好きでした。

その音を、お母さんは「ガラスの揺れる音」と言いますが、なみこにはガラスの揺れる音の奥から、透き通った風の歌が聞こえる気がしてなりません。

そんなある日の夕暮れのこと。

なみこが、風鈴の音に耳をすましていると、庭の向こうから風鈴の音が聞こえてきたのです。

不思議に思って外に出てみると、そこには浴衣を着たかわいらしいネコが、風鈴を持ってちょこんと立っていました。

そのネコはこなつと名乗り、なみこの家の風鈴は兄が作ったものだと言いました。

こなつはなみこに「風鈴づくりを見に来ませんか?」と聞きました。

なみこは風鈴づくりを見に行くことに決め、こなつについていきました。

歩きながら、こなつは色々なことを話してくれました。

昔はクーラーがなかったので、涼むために風鈴がよく売れたこと。

今は風鈴をかける家も減ったこと。

でも、兄さんは風鈴が好きで、作り続けていることなど。

話に夢中になっていると、いつの間にか見知らぬ森の中を歩いていました。

そして目の前には一軒の家が。

そこがこなつの家であり、風鈴づくりの工房でした。

中に入ると、工房の戸が開き、こなつのお兄さんが顔を出しました。

名前はなつねこ。

早速、風鈴づくりを見せてもらうことになり、なみこは工房の中へ。

なつねこは溶かしたガラスを、ガラス棒の先に巻き取ります。

さらにガラス棒の反対側から息を吹き込むと、溶かしたガラスが膨らんで、丸いガラス球になったのです。

ガラス玉が出来たら、次は絵付けの作業です。

なみこも絵を描かせてもらえることになり、なつねこと一緒に絵付けを始めました。

そこでなみこは思い切って聞いてみることにしました。

風鈴から聞こえる、風の歌のことを。

すると、なつねこはこの工房で作られる、風鈴の秘密を教えてくれたのです・・・。

『なつねこ』の素敵なところ

  • 風鈴から始まるひと夏の出会いと物語
  • 不思議で面白い風鈴の作り方がわかる
  • 風鈴の透き通った音の素敵な秘密

この物語は、風鈴の澄んだ音色から始まります。

その音を通して、こなつと出会い、不思議な工房へと誘われます。

そこで起こること、その後のことはまさに夏の夜の夢のよう。

とても素敵で、不思議で、でもどこかおぼろげな一夜。

これが夏の夜のイメージとぴったりで、美しくも儚げな雰囲気を醸し出しているのです。

読み終わった後に、風鈴の綺麗だけれど、どこか儚く、残響を残し消えていく音色を絵本全体から感じられるのが、素敵なところです。

さて、そんな出会いの中で辿り着く、風鈴工房。

そこではなつねこが、風鈴を作るところを見せてくれます。

そこでの風鈴の作り方は現実と一緒です。

あの風鈴の不思議な形が、どうやって出来るのか?

固いガラスをどうやって成型するかがわかります。

そんな風鈴の作り方を、なみこと一緒に教えてもらうことが出来るのも、素敵なところでしょう。

しかし、なによりも嬉しいのは、風鈴の秘密を知ることが出来ること。

なみこが風鈴の音の奥から感じていた歌。

その秘密を教えてもらえます。

この秘密が、詩的でロマンチックでとっても素敵。

知れば、風鈴の音を聞いた時に、新たな物語が頭の中に浮かんでくるかもしれません。

そして、風鈴を見た時に、「これはなつねこが作った風鈴かな?」と思いを馳せてしまうでしょう。

そんな魅力が、なつねこの風鈴には込められています。

風鈴の音色をきっかけにした、不思議で素敵で儚い出会い。

読めば、自分の家にも風鈴をかけ、その音色に耳をすませたくなる物語です。

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