構成・文:浅川真紀 出版:福音館書店
美術館に飾られている絵画たち。
その中から、ふわふわな絵画たちが集まりました。
普段は遠い絵画たちを、身近に感じ、一緒に遊べる絵本です。
あらすじ
ふわふわな毛並みに、耳のようなものが見える。
隠れているのはなあに?
それはアルブレヒト・デューラーの「野うさぎ」のウサギ。
次は顔が丸くて、手がひょろりと長いもの。
それは狩野栄信の「百猿図」のサルたち。
何匹いるのか数えてみよう。
今度はふわふわな黒いものに、足がいっぱい。
なんだか不気味なこれは、オディロン・ルドンの「笑うクモ」。
次は春を待って花開く、ピンクのふわふわ。
ページをめくると、満開の桜。
奥村土牛の「醍醐」の桜。
この後も、自然画や人物画、風景画など、色々なふわふわがかくれんぼをしています。
『ふわふわなあに』の素敵なところ
- 有名な絵画たちと一緒に遊べる
- 色々なタッチに色々な題材のふわふわと出会える
- わかりやすい作品紹介で、より深くその絵を知ることが出来る
この絵本の魅力は、美術館に置いてある、有名な絵画たちと一緒に遊べることでしょう。
普段は、静かな美術館に、整然と並べられ、触れることも許されない絵画たち。
それが、この絵本の中では、かくれんぼクイズの題材になったり、すぐ近くで見られたり、触れることだって出来てしまいます。
そうなってしまえば、もう身近な遊び相手です。
サルの数を数えられたり、カステラを「あむっ!」とつまみ食いされたり・・・。
でも、子どもにはこの距離感がちょうどいい。
この距離感だからこそ、その作品の魅力が子どもにも伝わるのだと思います。
また、出てくる作品も多種多様。
写実的なものから、暖かみのあるもの、不気味なもの、西洋のものから東洋のもの、果ては枕の絵まで・・・。
タッチも題材も多種多様です。
その中で共通するのが「ふわふわ」感。
「ふわふわ」と一言で言っても、柔らかな布地、生き物の毛並み、自然の草木や雲などの題材。
さらには、絵の具、墨、鉛筆など、描き方の違いもあり、色々な「ふわふわ」を感じ取ることが出来ます。
同じ共通点があっても、描く人、描くもの、込められた思いによって、こんなにも違いが出るのかと実感できるのも、この絵本の素敵なところです。
子どもたちも、
「これ、絵なの!?写真だと思った!」
「このふわふわは触りたくない・・・」
「私のスカートもふわふわ~」
と、絵を見ながら、色々な感想を持っていました。
きっと、絵から自分なりのなにかを感じ取っているからでしょう。
さて、色々な絵を見ていると、「なんでこれを描いたんだろう?」など、より詳しく知りたくなってくるものです。
そんな時、この絵本には最後のページに作品紹介を用意してくれています。
その文章がまた素敵なのです。
オディロン・ルドンの「笑うクモ」だったら、
「上目づかいで歯をむき出し、にやりと笑うクモ?!しかも足は8本でなく10本も。実際に入るはずのない不思議な生き物を、この画家はよく描きました。不気味な中にもどこか愛嬌がある表情は妙に人間っぽく、今にもなにかしゃべり出しそう。毛むくじゃらの体で素早く動き回り、いつの間にか、ほら、そこに・・・。」
というように、子どもにもわかりやすい文章で、なおかつユーモラスに紹介してくれるのです。
これにより、さらに作品を好きになったり、その画家の他の絵も見て見たくなってきます。
一緒に遊んだ絵を通して、さらに絵画や美術へ興味が広がる作りになっているのがとても素敵なところです。
色々な美術作品と、かくれんぼクイズを通して、ふれあい、遊ぶことが出来る。
真っ直ぐな感性で、絵画たちと見つめ合い、語り合うことが出来る絵本です。
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