このへやあけて(4歳~)

絵本

作:はせがわせつこ 絵:ましませつこ 出版:ポプラ社

ドアの閉まった一つの部屋。

のぞき窓から中を見るたび、違うものが見えてくる。

一体、この部屋は誰の部屋?

あらすじ

男の子と、女の子が、赤いドアを見つけました。

のぞき窓が一つあり、そこから中を覗いてみると・・・。

クマの人形と、女の子の人形がおしゃべり中。

女の子の人形が、クマの人形にどこへ行くのか聞いてみると、おばあちゃんのお見舞いに行くみたい。

女の子の人形も行きたいと言いますが、オオカミが出てくるからダメだと断られてしまいました。

次に覗くと、今度はフランス人形のマドレーヌと、日本人形のゆめこさんがおしゃべり中。

「こんにちは、ごきげんいかが」と挨拶するゆめこさん。

マドレーヌも「ボンジュール、コマン・タレ・ブー」と返します。

でも、ゆめこさんはどういう意味だかわからずに、頭を悩ませてしまいました。

さらに覗くと、野原に男の子の人形モリスくんと、女の子の人形メアリー先生、そして羊の人形が。

のはら保育園に、モリスくんがやってきましたが、羊もついてきちゃったみたいです。

メアリー先生に「羊はダメよ、帰りなさい」と言われてしまいました。

今度は何が見えるのでしょう?

この部屋は一体どうなっているのでしょうか?

『このへやあけて』の素敵なところ

  • 次々と見えるものが変わる不思議な部屋
  • 人形やおもちゃ同士の、どこかおちゃめでかわいい会話
  • 最後に明かされる部屋の中

この絵本の魅力は、全貌がわからない不思議な部屋にあるでしょう。

のぞき窓を覗くたび、違うものが見える部屋。

魔法がかかっているのか・・・。

はたまた、別の秘密があるのか・・・。

ページをめくるたび、全然違う場面に頭を悩ませてしまいます。

この中がどうなっているのか気になり過ぎるのが、とても面白いところです。

読み進めるたび、どんどん膨らんでいく疑問。

子どもたちも、

「一体誰の部屋なんだろう?」

「野原もあるし、池もあるしね」

「でも、全部おもちゃだよ」

と、色々と考えていることが伺えます。

さて、全体像が気になりつつも、一つ一つの場面が面白いのも素敵なところ。

人形やおもちゃ同士の会話が、なんともおちゃめで、かわいらしいのです。

コマン・タレ・ブーがわからな過ぎて、

「こまん たれ ぶーってなにかしら。こまん たれ ぶー、こまん たれ ぶー。ああ、わかりません わかりません」

と、頭を悩ませるゆめこさん。

「わたしが一番かわいいわ。いいえ、わたしが一番よ。いえいえ、わたし。わたし、わたし、わたし、わたし、わたし。」

と、言い合う、6本のこけし。

など、なんだか微笑ましかったり、言葉遊びみたいだったりします。

どの場面を見ても、クスリと笑ってしまうような楽しさがあるのです。

楽しみつつ、気になりつつ、進んでいく物語。

でも、やっぱり気になるのは部屋の中。

安心してください。

ちゃんと、最後に部屋全体を見ることが出来ます。

そこには驚きと、納得の光景が広がっていました。

「なるほど、こういうことだったのか!」

「だから、おしゃべりしてたんだね」

と、全ての疑問が解決・・・と、思いきや、

「でも、ここちょっと違うよ」

「あれ、あの時は・・・」

と、新たな疑問が。

納得感を与えつつも、端々に想像の余地が残っているのも、この絵本の素敵なところ。

「こうだったのかな?」

と、全体を見た後だからこその想像がとても面白いのです。

そして、それを確かめるため、自然ともう一度ページをめくってしまうのです。

開かずのドアの中に広がる、楽しくて不思議な世界を覗き見る。

読み進めるほど、部屋の中がどうなっているのか気になり過ぎる絵本です。

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