作:斉藤洋 絵:高畠純 出版:講談社
にょきにょきと、どんどん育つにょきにょきの木。
その木からは、色んなものが生えてきます。
花や木、動物・・・そして、人間まで!?
あらすじ
珍しいことに、にょきにょきの木の芽がありました。
にょきにょきの木は、にょきにょき伸びるので、にょきにょきの木と呼ばれています。
どんどん大きくなって、つぼみがつきました。
花が咲くかと思ったら、やっぱり花が咲きました。
にょきにょき伸びて、花が散って実になります。
果物の木かと思ったら、にょきにょきの木の枝から、別の木が生えてきました。
さらに鳥や動物などの生き物が生まれ、人間まで。
にょきにょきの木から生まれた、男の人と女の人がごあいさつ。
にょきにょきの木の上では落ち着かないので、二人で木を降りることにしました。
その間にも、にょきにょきの木はどんどん伸びて、にょきにょきにょき・・・。
壺や電球まで出来ていき、さらには車や飛行機が。
みょきにょきの木は、どこまで伸びていくのでしょう。
『にょきにょきのき』の素敵なところ
- なんでも生み出すにょきにょきの木
- これでもかと出てくる「にょきにょき」
- 切り貼りして作られた親近感
この絵本の面白いところは、なんと言っても不思議なにょきにょきの木。
最初は普通の木かと思っていたら、途中から様子がおかしくなってきます。
花や実、木が生えるなど、少しおかしなところはあれど、植物だったにょきにょきの木。
しかし、生き物を生み出し、人間を生み出し始めます。
まあ、そこまでは「生きている」というくくりで、ギリギリセーフかもしれません。
ですが、ついに壺や飛行機などの無機物まで生み出し始めるからもう大変。
動物や人間までは驚きつつも、なんとか受け入れていた子どもたち。
でも、無機物が出てくると、
「壺とか時計もあるんだけど!?」
「消防車出来てる!」
「飛行機まであるよ!?」
と、言いたいことが爆発。
驚きっぱなしでした。
そんな、どんどん大きくなっていくにょきにょきの木。
その大きくなる過程で、これでもかと「にょきにょき」という言葉が出てきます。
これが読んでいても、聞いていても面白い。
まずは大きくなるたび、
「にょきにょきにょき・・・」
と伸びていきます。
これだけでも「にょきにょき」とだいぶ言いますが、それだけではありません。
「にょきにょきにょき・・・。にょきにょきの木は、にょきにょき伸びるので、にょきにょきの木と呼ばれています。」
のように、ほとんど「にょきにょき」しか言っていないような文章が、所々に出てくるのです。
ページが進むにつれ、頭の中がにょきにょきで一杯に・・・。
そして気付くと、読んでいる方も、聞いている方も「にょきにょき」が楽しくてしょうがなくなってくる、妙なテンションになるのです。
さて、こんな不思議なにょきにょきの木ですが、その絵はとても親近感のあるものになっています。
それはチラシや絵を、切り貼りして作っているからです。
絵の具を塗った紙を、切って枝にしていたり、ハンバーガーのチラシを切り抜いていたり、新聞紙の切れ端が使われていたり。
動物は子どもが模様や顔を描いたようなものもあり、
「自分でも作れそう」
と思える親近感があるのです。
絵本を元に、自分のにょきにょきの木を作る遊びにも繋がる距離感も、この絵本の素敵なところだと思います。
予想もつかない成長と展開が、たまらなく面白い。
読めば「にょきにょきにょき」が、頭から離れなくなるナンセンス絵本です。
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