ぼくはおこった(4歳~)

絵本

作:ハーウィン・オラム きたむらさとし 出版:評論社

嵐のような子どもの怒り。

では、もし本当に怒ると嵐が巻き起こったとしたら・・・。

嵐で家を吹き飛ばしても、まだ怒りが収まらなかったら・・・。

あらすじ

ある晩、男の子アーサーは、テレビに夢中になっていた。

最後まで見たかったけれど、お母さんにダメと言われ、アーサーは怒った。

すると、お母さんは「怒りたければ、怒りなさい」と言った。

アーサーは怒った。

怒ると雷が鳴り、稲妻が走り、雹が降り、家の中をめちゃくちゃにした。

お母さんが、「もう十分」と言っても、アーサーは怒っている。

アーサーは、家の外に行き怒った。

怒ると嵐が吹き荒れ、街の屋根や煙突を吹き飛ばした。

お父さんが「もう十分」と言っても、アーサーは怒っている。

怒ると台風がやってきて、海が街を全てのみ込んだ。

おじいさんが「もう十分」と言っても、アーサーは怒っている。

怒ると地球にひびが入り、地球が卵のように壊れてしまった。

宇宙でおばあさんが「もう十分」と言った。

でもまだ、アーサーは怒っている・・・。

『ぼくはおこった』の素敵なところ

  • 怒りのスケールが壮大過ぎる
  • 思う存分怒れる
  • 怒った後の子どもらしいオチ

この絵本の面白いところは、なんと言っても、怒りのスケールの大きさでしょう。

怒ると稲妻が走り、嵐を呼び、地球まで壊してしまいます。

子どもたちもこれには、

「すっげー!」

「怒り過ぎだよ!」

「おうちなくなっちゃうよ!」

と、びっくり仰天。

さらに、いくところまでいった怒りに、

「えー!?」

と、言葉を失っていました。

でも、不思議なことに、スケール感はすごいけど、

「子どもの怒っている姿って、こんな感じだよな~」

と、妙な納得感があるのも不思議な所。

全身全霊で怒っている子どもの姿と、アーサーの姿はそっくりなのです。

そして、子どもにもその実感はあるようで、

「みんなも怒るとこんな感じだよね」

と、言われても否定しきれない表情を浮かべるのでした。

さて、この絵本の素敵なところは、そのスケール感で思い切り怒れるところ。

邪魔をするものはなにもありません。

「もう十分」と声をかけられても知ったことではありません。

ただ、感情のままに怒り狂い、全てを破壊し尽せるのです。

ここまで、思い切り気持ちを発散できる機会は中々ありません。

そこにこのスケール感が加わればもう無敵です。

いつもは抑えられがちな感情を、自由に爆発させられる。

そんな素敵な世界が広がっているのです。

そうして、思いきり怒った後の、アーサーの姿も面白いところです。

その姿は、怒り狂った後の子どもそのもの。

「あの怒りは何だったんだ・・・」

と、思うような、子どもの怒りあるあるなオチに笑ってしまいます。

子どもたちも、

「あー、あるある」

と、ちょっとバツの悪そうな顔をしているのが、また面白いところ。

「私怒るとこんな感じ。嵐は起こさないけど」

と、嵐のように怒っている自覚はあるようです。

アーサーと一緒に、地球を壊すほど思い切り怒ることが出来る。

心を思い切り開放しつつも、自分が怒って嵐を起こしていることを、自覚させてくれる絵本です。

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