作:高崎卓馬 絵:黒井健 出版:講談社
心に浮かんだことを描く授業。
男の子は紙を真っ黒に塗り続けた。
何日も何日も、何枚も何枚も。
そして・・・。
あらすじ
学校で、「心に浮かんだことを描いてみる」という授業の時間。
みんなが絵を描いている中、ある男の子が紙を真っ黒に塗っていた。
先生は困って「ちゃんとした絵を描きなさい」と言った。
それでも男の子は、紙を真っ黒にし続けた。
学校が終わっても。
家に帰っても。
朝になっても。
休みの日も。
大人はみんな心配した。
友だちも。
でも、男の子は手を止めなかった。
その時、不思議なことがおきた・・・。
『まっくろ』の素敵なところ
- 「自由に描くこと」の枠を外してくれる
- 自分の思いを貫き通す男の子
- 最後に待っていたもの
この絵本は、「心に浮かんだことを描く」ということから始まります。
それは「自由に描くこと」でもあります。
でも、多くの子が「紙の大きさに合わせて描く」という、制限を自分でつけて描いています。
もちろん先生も。
そんな中、男の子は常識を覆し続けます。
紙の制約、時間の制約。
その姿は、芸術家そのもの。
この男の子の姿を見ていると、子どもも大人も、
「こんな方法もあるんだ!」
と、素直に驚かされます。
きっと、「自由に絵を描く」がより自由なものになるでしょう。
しかし、その姿は周囲から心配されてしまいます。
大人からも、子どもからも。
おそらく、心の心配をされたりしているのでしょう。
普通なら、それが目に入り、空気を読んでしまうかもしれません。
ですが、この絵本の男の子は一心不乱に描き続けます。
自分の描きたいもののために、周囲を気にしない強さを持っています。
その強さは、描きたいものがあるけれど、躊躇してしまう子に勇気を与えてくれるでしょう。
さて、紙を真っ黒にし続けていると、ある変化が訪れます。
真っ黒じゃない紙がいくつか現れたのです。
それは4枚の紙を合わせて作った、大きな白い丸。
そこから、男の子が描いた真っ黒の正体が判明します。
その壮大な作品に、子どもたちも、
「うわ~!」
「おっきいね!」
「本物みたい!」
と、感嘆の声。
男の子の努力と、スケール感に驚いていました。
でも、なにより完成した絵からの、男の子へのメッセージが、きっと男の子にとっては何より嬉しかったでしょう。
そして、見ている子へも、「絵を描きたいな」と思わせてくれるなにかが伝わることでしょう。
たった一人、周囲の目線を気にせず、壮大な作品を作り上げる男の子。
その姿を通して、自由に作るという意味と、自由に絵を描くための強さが伝わってくる絵本です。
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