文:谷本雄治 絵:サトウマサノリ 出版:文溪堂
立派な角がかっこいいカブトムシ。
そんなカブトムシの力強い戦い方。
さらにはその生活や、秘密までわかってしまう絵本です。
あらすじ
夏の森の夕暮れ時。
カブトムシが起きてきて、空へと飛び出しました。
カブトムシは暑い昼間が苦手なので、暗くなるまで落ち葉の布団で眠っているのです。
やってきたのは古くて大きなクヌギの木。
幹にたまった甘い汁がしみ出しています。
カブトムシはブラシのような口で、樹液を舐めます。
そこへ、クワガタムシがやってきて、カブトムシを押しのけようとしました。
カブトムシとクワガタムシの戦いが始まります。
クワガタムシがカブトムシの角を顎で挟みました。
しかし、カブトムシは踏ん張って、クワガタムシを空に向かって跳ね上げました。
これでゆっくり食事が出来ます。
と、隣のクヌギに引っ越そうとしたその時。
フクロウが舞い降り、一匹のカブトムシが鋭い爪に掴まってしまいました。
日の出の時間になり、クヌギのレストランは店じまいです。
カブトムシも木から飛び立ちます。
メスのカブトムシは、卵を産む場所を探しに出かけるみたい。
無事にいい場所が見つけられるでしょうか。
『なつのもりのかぶとむし』の素敵なところ
- カブトムシがリアルでかっこよすぎる
- カブトムシの秘密がわかりやすく描かれる物語
- より詳しいことがわかる追記
この絵本の何よりも素敵なところは、カブトムシのかっこよさです。
黒光りする体。
立派な角。
力強い足の爪。
開いた羽。
その全てがかっこいいのです。
これは写真では表現できないものだと思います。
リアルに描かれたイラストだからこそ、そのかっこよさが120%まで増幅されているのだと。
子どもたちも、
「うわ!かっこいい!」
「強そう!」
「ケンカ始めたぞ!」
と大興奮。
見ているだけで、テンションが上がるのです。
もちろんかっこいいだけでは、終わりません。
カブトムシの秘密を、たくさん知ることが出来ます。
これが物語として描かれることで、楽しくカブトムシのことを学べるのも、この絵本の素敵なところです。
「ブラシみたいな口だから、舐めやすいんだよね」
「こうすると、匂いがよくわかるのよ」
など、セリフとして知識が出てくるので、理解しやすかったりもします。
一対のカブトムシの夫婦を追っていくことで、ハラハラドキドキの一日を体験しつつ、その秘密を知ることが出来るのです。
さらに面白いのが、より詳しい追記です。
物語に組み込むと、わかりにくくなってしまいそうな、より深い知識を追記と言う形でページの中に入れてくれています。
これにより、
樹液がどうしてしみ出しているのか?
カブトムシの角は体の一部で、短い方は胸、長い方は頭である。
など、より詳しく知りたい子の、知識欲を満たしてくれるのです。
また、追記になっていることで、物語の妨げにならず、詳しい子もそうでない子も、一緒に楽しめるようになっているのが素敵なところです。
力強くて、かっこよすぎるカブトムシの姿に見惚れながら、より詳しく、カブトムシの生態や秘密を知ることが出来る絵本です。
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