作・絵:マシュー・マケリゴット 訳:野口絵美 出版:徳間書店
人間の髪を切る床屋さん。
でも、夜になると違うお客さんがやってくる。
さあ、開店の時間です。
あらすじ
ぼくの父さんは床屋さん。
でも、実はぼくも床屋さんなんだ。
満月の夜。
ぼくをコウモリの化けたドラキュラが迎えに来た。
ぼくはコウモリと一緒に家を出て、床屋さんへ向かう。
裏口から入り、ドラキュラと一緒に開店準備。
12時半を回ると、お得意さんがぼちぼち現れ、1時には満員。
ミイラ男や、メデューサなど、みんなモンスターだ。
毛が一本しかなくて、簡単なお客さん。
毛がたくさんで硬い、大変なお客さん。
いつも決まった髪のお客さんから、髪形を変えるのが好きなお客さんまで色々。
仕事がはかどっていたその時、表のドアをノックする音がした。
おかしい。
夜の床屋さんは、みんな裏口から入ってくるのに。
開けてみると、人間のお客さんだった。
どうしよう・・・。
『ぼくはモンスターのとこやさん』の素敵なところ
- 個性豊かなお客さんと癖の強すぎる髪
- 床屋さんが子ども
- みんなで開く床屋さん
この絵本の見どころは、なんと言っても、モンスターの髪を切るところでしょう。
普段は怖いモンスターが、笑いあったり、新聞を読んだり、子どもをあやしたりしながら、お店に集っています。
そして、席におとなしく座り、髪を切ってもらっているのです。
モンスターも多種多様。
ドラキュラから、蜘蛛男、ネッシーまで、色々なモンスターが集まっています。
この光景だけでも面白過ぎて、子どもたちのテンションが上がります。
「ミイラ男だ!」
「フランケンシュタインもいる!」
と、大盛り上がり。
モンスターなので、もちろん髪質も色々。
ごわごわで硬い毛。
髪の毛が蛇。
髪の毛どころか、皮膚すらない。
など、癖が強すぎます。
でも、そこはプロ。
髪の毛が蛇のメデューサには、自分が石にならないよう、目隠しをしながら切るなど、モンスターの個性に合わせた対応をしてくれるのです。
この床屋さんが、子どもなのも面白いところです。
子どもであることで、見ている子の没入感があがります。
自分と絵本の中の「ぼく」を重ね合わせ、自分も床屋さんになった気分にさせてくれるのです。
また、子どもだからこその、夜、家を抜け出すドキドキ感。
背が低い分、脚立を使ったり、背伸びをして頑張る姿への、共感も生まれるのでしょう。
これも主人公が子どもならではの、素敵なところだと思います。
しかし、子ども一人でお店の準備をするのは大変です。
なので、このお店では、モンスターも一緒に手伝ってくれます。
開店準備は、ドラキュラが手伝ってくれ、内装をモンスター用に変えてくれたりしています。
片付けの時も、毛の長いモンスターがほうきになって、床をはいてくれたり、お店を人間用に戻したりと、手伝いをしてくれます。
こうして、みんなで協力しているからこそ、開くことが出来ているのです。
そんな自然な優しさや、思いやりもこの絵本のとても素敵なところです。
他にも子どもたちが、
「あ!それ使っちゃダメ!」
「これ変わってるってことなのか!」
と、驚いたり発見したりするところが、たくさんある絵本なので、ぜひじっくりと読んでみてください。
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