もりのおひめさま(4歳)

絵本

作:ジビュレ・フォン・オルファ―ス 訳:奏理絵子 出版:平凡社

森にはお姫様が住んでいます。

そのお世話をするのは、森の自然や生き物たち。

今日もお姫様の一日が始まります。

あらすじ

森の中で、森のお姫様が窓から外を眺めています。

すると、朝の風に乗って、露の子たちがやってきました。

露の子たちは、お姫様の髪をとかし、金色の靴を用意して、赤い服のリボンを結びます。

次に来たのは、苔の坊やたち。

はちみつや、木の実、パンなどの朝ごはんを運びます。

朝ごはんが終わったら、勉強の時間です。

カラスの先生が、本を抱えて教えます。

勉強が終わると、小ジカやウサギたちを集めて、楽しい遊びの時間です。

森の外れまで出かけ、フカフカの苔が生えた場所に来ました。

そこで、キノコの子どもたち、きのこぼっこに昔話をしてもらうのです。

辺りが暗くなると、星の子どもがやってきます。

森の奥、おうちへと帰る道を照らします。

森の動物たちも、お姫様も眠ります。

おやすみなさい。

『森のおひめさま』の素敵なところ

  • お姫様の夢のような素敵な一日
  • リアルなのにファンタジーな森の風景
  • リズミカルで歌っているような文章

この絵本の素敵なところは、お姫様と一緒に夢のような一日を、過ごせることだと思います。

楽しく、ワクワクして、笑いの絶えない一日。

それはもう、子どもらしい生き生きとした時間です。

さらに、森の生き物たちだけでなく、露や苔、きのこなど、森にあるものすべてと関わり、言葉を交わし遊びます。

森の全てと触れ合い遊べるのです。

これが楽しくないはずありません。

だからこそ、主人公はお姫様ですが、男の子も女の子も夢中になります。

そんな男女の垣根を越えた、楽しさがこの本にはあるのです。

もちろん、お姫様ならではの、素敵な赤い服や、金の靴などの要素もあり、お姫様になってみたいという思いを満たしてくれる部分もあります。

女の子はより強く、この世界に入り込んでいくかもしれません。

また、お姫様の身長が子どもの大きさなのも、没入感を増している部分です。

自分も、お姫様と同じ目線で、この世界を見ることが出来るのです。

さて、そんな絵本で描かれる森は、とても写実的に描かれます。

木の枝や、生い茂る葉など、細部まで本物そっくりに描かれます。

その中に、露の子やきのこぼっこ、星の子どもがとても自然に現れます。

当然森にいるものかのように、とても自然に。

これもこの絵本の素敵なところ。

小ジカや、ウサギたちのように、森の子どもたちも、森の中で自然に生きているのです。

それが、「自分も森に行ったら、露の子やきのこぼっこと話が出来る」と自然と思わせてくれるのです。

さて、物語やイラストだけでなく、文章も素敵なところです。

「森の中、森の小さなお姫様。窓から外を、眺めてる」

「金の靴を用意して、赤い服の、胸のリボンを結びます」

のように、リズミカルに歌うように綴られます。

とても耳に心地よく、森の中の雰囲気と相まって、楽しくも穏やかな空気感を作り出してくれるのです。

言葉選びも美しく、一つの詩が、そのまま絵本になったよう。

その美しさも、お姫様の雰囲気とよく合っています。

物語、イラスト、文章が溶け合っているからこそ、この世界観や空気感が生まれたのだと思います。

森のお姫様と、森の中で自然と触れ合いながら、素敵な一日を一緒に過ごせる。

自分も森の中を走り回り、寝転び、飛び跳ねたくなる絵本です。

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