かえりみち(4歳~)

絵本

作・絵:ブリッタ・テッケントラップ 訳:木坂涼 出版:ひさかたチャイルド

歩いていると、子どもは色んなものに気付きます。

「ちょっと待って!」「ねえ、見て!」。

そんな言葉に、ゆっくりのんびり寄り添う絵本です。

あらすじ

ある日の夕暮れ時。

大きなハリネズミと、小さなハリネズミが歩いていました。

二人は家に帰るところです。

小さなハリネズミが言いました。

「ねえねえ、ちょっと待って」

小さなハリネズミは、お日さまが沈んでいくところを見たいと言います。

そこで、二人は眺めのいいところに座って、日がすっかり沈むのを見ました。

そして、二人はまた歩き出しました。

少し行くと、また小さなハリネズミが言いました。

「ねえねえ、ちょっと待って」

今度は、空に昇ったお月様を見ていたいと言います。

二人は空を見上げて、月を静かに眺めました。

そして、また歩き出しました。

しばらく行くと、花の咲いた野原に出ました。

小さなハリネズミは言いました。

「ちょっと待って、すごくいい匂い」

そこで、二人は花の香りを十分に楽しみました。

また、しばらく行くと、小さなハリネズミが言いました。

「ねえねえ、今の聞こえた?」

大きなハリネズミが耳をすますと、フクロウの鳴き声でした。

フクロウだと伝えると、小さなハリネズミが見たいと言うので、大きなハリネズミは肩車をして見せてあげました。

二人が歩いていくと、また小さなハリネズミが言いました。

「ちょっと待って」・・・。

『かえりみち』の素敵なところ

  • 子どもの声に耳を傾ける、のんびりとした帰り道
  • 自然の持つ美しさに「ちょっと待って」と言いたくなる絵
  • 読む人によって変わるハリネズミの間柄
子どもの声に耳を傾ける、のんびりとした帰り道

この絵本の、とても素敵なところは、「ちょっと待って」を全て聞いてあげるところです。

きっと、普段の帰り道でも「ねえねえ」と、子どもに呼び止められることは多いでしょう。

保育園での散歩中にもよくあります。

でも、遅くなってしまうので、全ては聞いてあげられないのが現実です。

そんな「全部聞いて、のんびり歩きたい」という大人の思い。

「全部、自分の話を聞いて欲しい」という、子どもの思い。

その両方を、叶えてくれるのがこの絵本なのです。

子どもの気付きに寄り添うことで、大人も色々なことに気付かされます。

満月の大きさ。

花のいい香り。

フクロウの鳴き声。

そうやって、歩く帰り道は、とてもキラキラとしていて、まるで未知の星を歩いているかのようです。

のんびりと、何者にも邪魔されない、二人だけの宝物のような時間が本当に素敵です。

自然の持つ美しさに「ちょっと待って」と言いたくなる絵

また、この帰り道を、より楽しく素敵なものにしてくれているのが、美しく幻想的な絵です。

真っ赤な夕焼け空。

空に輝く大きな満月。

森の暗がり。

そこに生きる虫などの生き物。

そのどれもが、自然そのものの美しさや面白さを伝えてくれます。

こんなところを歩いていたら、「ちょっと待って」と言ってしまうでしょう。

絵本を見ている子どもたちでさえ、

「ちょっと待って!あそこに虫がいる!」

「ねえねえ!フクロウの赤ちゃんもいよ!」

と、言ってしまうのですから。

そんな美しい自然の中、二人でのんびりした時間を味わっているハリネズミの姿がまた、なんとも素敵なのです。

読む人によって変わるハリネズミの間柄

さて、仲のいい二人のハリネズミ。

実は、その間柄は明かされず、小さなハリネズミと、大きなハリネズミという表記だけになっています。

口調からもわかりません。

ここもこの絵本の粋な所。

お父さんかもしれない、お母さんかもしれない。

おじいちゃんや、お兄ちゃんなのかもしれない。

それは読んだ人が、自由に頭に思い浮かべていいのです。

それぞれに、大切な人との帰り道を楽しめる。

そんな心遣いも、この絵本のとても素敵なところだと感じます。

二言まとめ

普段は中々聞いてあげられない「ちょっと待って」に、のんびり付き合ってくれる。

子どもも大人も、時間を気にせずゆったりと、歩くことが出来る絵本です。

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