作:ねじめしょういち 絵:高畠那生 出版:そうえん社
全然冬ごもりをしないクマさん。
森のみんなが心配して、冬ごもりさせようとしてくれます。
でも、次の日には、穴から出てきてしまうのです・・・。
あらすじ
クマさんが冬ごもりをせず、山をうろうろしています。
そこで、森の動物を代表して、ウサギさんがクマさんに、
「冬ごもりをしてください」
と、言いました。
クマさんはうなずくと、冬ごもりの場所を見つけ、穴を掘って、穴の中で冬ごもりを始めました。
次の日の朝。
ウサギさんが歩いていると、クマさんは冬ごもりのことなどすっかり忘れ、山をうろうろしていました。
ウサギさんがもう一度頼むと、クマさんはうなずきました。
他の動物たちも心配し、一緒に穴に入り、マッサージしたり、子守唄を歌ったりと、冬ごもりを手伝いました。
クマさんが眠るのを見届けると、山の動物たちは穴から出てきました。
次の日の朝。
山の動物たちが野山に出かけると、やっぱりクマさんが大きな木に登っていました。
山の動物たちは集まって相談しました。
そして、イノシシさんと山越え競争をさせ、クマさんをクタクタにして眠らせようと考えました。
早速、クマさんを山越え競争に誘うと、クマさんはやる気満々。
山越え競争が始まりました。
今度こそ、クマさんは冬ごもりをしてくれるのでしょうか・・・。
『わがままくまさん』の素敵なところ
- 安定感抜群のクマさん
- 予想外(?)なオチ
- クマさんの絶妙に腹が立つ顔
安定感抜群のクマさん
この絵本の面白いところは、毎回当たり前のように起きてくるクマさんです。
どんなに頼んでも、手を尽くしても、次の日には自然に山をうろついています。
悪びれることもありません。
当たり前のように起きてくるのです。
この安定感が抜群すぎる。
子どもたちも最初は、
「眠れたね」
と、温かく見守っていましたが、次第に、
「絶対起きてくるよ・・・。」
「ほら、起きてきた!」
「も~!」
と、予想通り過ぎるクマさんに、呆れながらも大笑い。
予想通りのことを、綺麗にやってのけるのです。
予想外(?)なオチ
そんなクマさんですが、山越え競争でクタクタになります。
そして、ぐっすり・・・。
ここで、予想が分かれます。
「今度こそ眠って、めでたしめでたし」か、「やっぱり起きてきて、うろうろしているか」。
しかし、待っているのはどっちの予想をした人にも、予想外のオチでした。
オチを見ての動物たちの表情は必見です。
クマさんの絶妙に腹が立つ顔
さて、このお話の流れと、見事なほどマッチしているのが、高畠那生さんの絵です。
この独特な表情が、この絵本をより面白くしてくれます。
特にクマさんの表情。
絶対、なんにも考えていないのが、見るからに伝わってくるのです。
その何にも考えてなさが、動物たちの苦労とのギャップで、絶妙に腹が立ちます。
でも、それがいい。
また、一度だけちゃんと考えている顔もしますが、それもちゃんと、絶妙に腹が立つのもまたいいのです。
このクマさんや動物たちの表情があるからこそ、このシュールな物語が、より面白いものになっているのだと思います。
二言まとめ
動物たちの献身的な苦労と、なんにも考えてなさすぎるクマさんのギャップが面白い。
読んでいると、動物たちと一緒に、なんだか力が抜けてしまう絵本です。
コメント