文:寮美千子 画:小林敏也 出版:パロル舎
オオカミの子が走ってきて氷で転ぶのは、氷の方が偉いから。
氷が日差しで溶けるのは、お日さまの方が偉いから。
お日さまが雲に隠れるのは、雲の方が偉いから・・・。
あらすじ
氷の上を、オオカミの子が走ってきて・・・。
つるんと転んだ。
男の子がそれを見て、お父さんに聞いた。
「どうして転んだの?」
お父さんが言った。
「それは氷がオオカミより偉いからだよ」
男の子は「でも、氷は溶けちゃうよ」と言った。
お父さんが「それはお日さまが偉いからだと言った。
さらに男の子が「お日さまは雲の向こうに隠れるよ」と言った。
お父さんは「それは雲が偉いからだよ」と答えた。
その後も、雲よりも風、風よりも山、山よりも木・・・。
と、どんどん偉いものが出てくる。
さて、一番偉いのは・・・?
『おおかみのこがはしってきて』の素敵なところ
- 『ネズミの嫁入り』のような先が気になる繰り返し
- 納得の一番偉いもの
- 最後の終着点
『ネズミの嫁入り』のような先が気になる繰り返し
この絵本では、どんどん偉いものが出てきます。
それはまるで、昔話『ネズミの嫁入り』のようです。
とってもわかりやすいですが、とっても先が気になります。
「これより偉いものあるかな?」
と、次に出てくるものを予想するのが面白い。
しかし、ネズミの嫁入りとは違い、最初のネズミに戻ってくる展開とは大きく違います。
生と死、大きな自然へと話が広がっていくのです。
そして、一番偉いものまで、しっかりと語られるのです。
納得の一番偉いもの
その一番偉いものは、とても納得感のあるものでした。
地球でこの大地に上に生きるために必要不可欠なもの。
その内容や、理由を聞いた時に「なるほど」と思えてしまうのです。
「こっちの方が偉いんじゃない?」
という反論にも、「でも、これがなかったら・・・」と返せるくらいの納得感。
とても世界や生死の、根源的な部分を考えさせられるものになっています。
最後の終着点
そんな壮大に広がっていくお話の、最後の終着点。
これがなんともこじんまりして、生活に密着しているのが、この絵本の素敵なところ。
「最終的にそこか~」と、思わずツッコんでしまいます。
でも、そんなところが、昔から伝えられてきた民話ならではの、温かさやほっこり感を味わえて素敵だなと思う所でもあるのですが。
二言まとめ
どんどん偉いものが出てくるワクワクの繰り返しの中で、楽しみながら、壮大な自然の力を改めて考えさせられる。
なのに、もの凄い生活感に満ち溢れたアイヌの民話絵本です。
コメント