文:エイミー・グリエルモ/ジャクリーン・トゥールヴィル 絵:ブリジット・バラガー
訳:神戸万知 出版:フレーベル館
ディズニーの名物アトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」。
それを作った女性の話を知っていますか?
これはその女性メアリー・ブレアの物語です。
あらすじ
あるレモン色の家に、メアリーという女の子が住んでいました。
メアリーは色を集めるのが好きでした。
ある日、引っ越しが決まり、メアリーは家のレモン色をポケットに詰め込み、住んでいた家を後にしました。
引っ越しの道中、たくさんの色を集めました。
それをメアリーはスケッチブックに塗り、取っておきました。
大きくなったメアリーはリーという青年と出会いました。
メアリーとリーは二人で虹を描きましたが、誰も虹を買ってくれませんでした。
ただ一人を除いては・・・。
それがウォルト・ディズニーでした。
メアリーはウォルト・ディズニー・スタジオで働くことになりました。
スタジオで女性が初めて雇われるようになったメンバーの一人として。
しかし、スタジオで必要とされているものは、白と黒だけでした。
メアリーはみんなに合わせ、決まりごとに従うように言われました。
でも、メアリーの色は自由でした。
その自由な色を、スタジオの偉い人たちはどう受け止めればいいかわからず、首を横に振るばかりでした。
けれど、社長のウォルトだけはわかっていました。
そこで、ウォルトはメアリーを南アメリカを訪ねる旅へ誘いました。
そこには新たな色たちが待っていました。
メアリーは、その色たちを一生懸命に集めていきました。
スタジオに戻ると、アニメ映画の元になる絵を描きました。
今回はメアリーの色をいくつか使ってもらえました。
でも、ほとんどの絵はわかってもらえませんでした。
その窮屈さにうんざりしたメアリーは、スタジオをやめました。
すぐにメアリーは仕事を見つけ、忙しい日々を過ごしていました。
けれど、ウォルトと離れたことを寂しくも思っていました。
そんな時、突然電話が鳴りました。
ウォルトからでした。
魅力たっぷりのアトラクションを作るのに、メアリーの力が必要だと言うのです。
メアリーはにっこりしましたが、すぐに顔をしかめました。
スタジオの窮屈さを思い出したからです。
そこでメアリーは引き受ける代わりに、ある条件を出したのです・・・。
『ポケットに色をつめこんで』の素敵なところ
- ものすごくわかりやすい言葉で、メアリーの魅力や苦労、歴史の背景などまで伝わってくる
- イッツ・ア・スモールワールド完成の大切な舞台裏
- 自分もメアリーの色とたくさん出会っていることに気付かされる
ものすごくわかりやすい言葉で、メアリーの魅力や苦労、歴史の背景などまで伝わってくる
この絵本は、メアリーの子どものころから、大きな仕事を成し遂げるまでの、長い期間を描いた伝記です。
さらに、昔の男性社会の中で働く苦労や、白黒アニメが主軸だった業界に、カラフルな色を取り入れる大変さ、さらには常識に囚われない独創的な色使いを、中々受け入れてもらえないなど、複雑で根深い問題を乗り越えていく様子も描かれます。
ですが、それらの複雑な問題までも、子どもにもわかりやすい言葉で描いてしまうのが、この絵本のすごいところ。
見ている子どもも、
「昔は白と黒ばっかりだったんだ」
「メアリーすごいね!」
「こんな仕事してみたいな!」
と、メアリーの大変さや魅力を感じている様でした。
イッツ・ア・スモールワールド完成の大切な舞台裏
さて、そんなメアリーの集大成が、ディズニーのアトラクション『イッツ・ア・スモールワールド』です。
そんな『イッツ・ア・スモールワールド』をメアリーが手掛けるまでには、多くの波乱がありました。
組織のしがらみでディズニースタジオを辞め、それでもウォルト・ディズニーにその手腕を求められ、『イッツ・ア・スモールワールド』の製作に携わる。
『イッツ・ア・スモールワールド』が、あんなにも素敵な夢の世界になったのは、メアリーが小さいころから集めてきた色や、それを自由に使う場所を手に入れるまでの歴史があったからこそなのだと実感させられます。
あまり知られていない、『イッツ・ア・スモールワールド』が出来るまでの大切な舞台裏も知ることが出来るのです。
これを知ってから、『イッツ・ア・スモールワールド』を見れば、新しい色たちに気付き、出会えるかもしれません。
自分もメアリーの色とたくさん出会っていることに気付かされる
また、この絵本には『イッツ・ア・スモールワールド』の他にも、みんながよく知っている作品が登場します。
絵本の中でプレゼンをするメアリーの絵の中に、『不思議の国のアリス』や『シンデレラ』など、子どもたちに馴染み深いキャラクターの絵を見つけることが出来るのです。
カボチャの馬車がオレンジではなく、薄緑色なのはメアリーの色のおかげです。
『不思議の国のアリス』の芋虫が海色なのも、『ピーターパン』の人魚が黄緑色なのも。
子どもたちも、「あ!アリスだ!」「ティンカーベル!」「シンデレラ、私のお洋服についてる
よ!」と、大興奮。
実はすでに、たくさんのメアリーの色に出会っていることに気付かされるのです。
それらの生みの親であることがわかるのも、子どもの憧れをより大きくし、その伝記にもより惹きつけられたのだと思います。
二言まとめ
メアリーの、自分が集めてきた大切な色を信じ抜く姿を通して、自分のやりたいことを貫き通す力と勇気をもらえる。
改めて、メアリーの生み出した色たちを、見て回りたくなる絵本です。
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